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世界一のスピードで高齢化が進む日本の社会。その中で、だれもが安心して老後を迎えるためには、何をどう変えていかなければいけないのでしょう。そこで、今回ご登場いただいたのが、チャキチャキの江戸っ子気質に大阪のお笑い精神を織り混ぜた絶妙の語り口で、介護問題を切りまくるノンフィクション作家の門野晴子さん。「介護はやったものにしかわからない」と言い切る介護歴23年の重みと、体験者だから断言できる介護のあり方を2回にわけて語っていただきます。
 
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 「バカだなあ。賞状だけじゃ鼻もかめない。ケツもふけねー」って言ってやったわよ。
 私の講演の前に、献身的に介護をやっている人が自治体から表彰されることがよくあるんですけど、「副賞にお金もつくの」と聞くと、賞状だけっていうじゃないですか。だから、言ってやったんです。
 介護といえば、押しつけられるのは女ばかり。それに疑問も抱かず、正義感に燃え、愚痴も言わず、キラキラと輝いて介護をやって「成長させてもらいました」なんて、『善なる無償労働』を肯定する人がいるから、いつまでも女は人間になれない。しかも、そんな人はメデタイだけじゃなくて、他の人までそうした介護地獄に引きずり込もうとするから問題なの。もちろん、多種多様の考え方、生き方があることが大前提なんですけどね。

 女って結婚と同時に、面倒を見なきゃあいけない親が4人になるでしょう。男は仕事という逃げ口がありますからね。私の介護(高齢者の世話)歴も、39歳の時に父が前立腺の末期ガンと宣告されて以来、姑を見送り、舅の世話をし、母の介護は今も続いているから、延々23年。切れ目がないうえ、ダブっている時期さえあるという現実は、もう笑い話じゃすみませんよ。

 東京で父の介護にバテ気味な母を手伝っていた時、突然舞い込んだのが奈良県・斑鳩の姑が脳出血で倒れたという知らせ。姑は1週間の介護で逝ってしまって、残されたのが自分のパンツのあり場所さえわからないオトノサマの舅でした。家父長制度の残る旧家で、舅の世話を当然のように押しつけられたのが、長男の嫁である私。夫は単身赴任、2人の義妹は嫁ぎ先の親が大優先でしたもの。父は悪化する一方で、新幹線の回数券を買って、東京と斑鳩を行き来する日々でした。
 表面的には嫁らしく振る舞いながらも、年老いた舅の醜さ、ずるさ、したたかさ・・に絶望してしまい、「家事・育児のできない男は人間じゃあない」と思っている私にとって、舅との関係は最悪でした。縦の物を横にもしないのに、よく食べる、足腰は強い、虫歯も1本もないんですから、もう化け物ですよ。「いい嫁になろう」なんて思いは、これっぽちもなかったけど、人に愚痴ひとつこぼせないんですから孤独でした。ただ息子と娘が一緒で、我が家が友達のたまり場になっていたせいか、毎日が吉本新喜劇の出前のように賑やかだったんです。深刻な女の状況を、子どもたちの漫才が救ってくれ、笑いが私の逃げ道にもなってくれたんですよね。


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