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映画「折り梅」で考える高齢者問題

監督/松井久子 出演/原田美枝子・吉行和子・トミーズ雅 ほか物語

パート勤めの巴(原田美枝子)は、サラリーマンの夫(トミーズ雅)と、中学生と小学生の子ども2人の4人家族。同居することになった夫の母・76歳の政子(吉行和子)に、突然、痴呆の兆しが見えはじめる。政子の微妙な変化に戸惑う巴。その一方で、政子自身も知らず知らずのうちに変わりつつある自分を不安に感じ、焦り、身近な巴や孫たちにあたりながらも孤独感を深めていく。困り果てた巴は、きちんとした診断をと、嫌がる政子を病院に連れていき、下された診断がアルツハイマー型痴呆症だった。不安定な日常のなかでも、家族や介護の犠牲にはなりたくないとパートを続ける巴は、政子の被害妄想や徘徊に振り回され、家族も崩壊寸前に・・・。
 そんなある日、思いがけず出会った絵の世界。子どものように絵筆を握ることで自分の居場所を見つける政子。義母の純粋さにふれ、痴呆と正面から向き合う決心をする巴。丸ごと受け止められた政子は、周りのだれもが想像できなかった絵の道を拓いていく・・・。

 原作は、愛知県豊明市在住の小菅もと子さん著『忘れても、しあわせ』(1998年日本評論社)。

「老い」と真正面から向き合うことで、見えてくる家族の絆 映画「折り梅」監督 松井久子さん

 痴呆症になったお年寄りが絵筆を握ることで、まるで別人のように輝けるなんて、だれも想像しえないこと。でも、それが実話だから、皆さんが受け入れてくださるんです。
 昨年春の公開以来、ロードショーを含め観客数は半年で40万人を越え、その後に決まった自主上映会は全国で約500カ所も。老いや痴呆は、ついこの間まで避けて通ってた問題なのに、皆さんが自分のこととして向き合おうとする時代なんだなと痛感しています。

人は誰かに認められないと、心豊かに生きていけない

『折り梅』というのは、生け花の手法のひとつでしてね。梅は樹皮から養分を吸い上げるため、幹がさけても、がらんどうになっても、枝を折っても、平気で花を咲かせる。その凛とした強さに、老いてもなお輝ける命の尊さを重ねました。
「人は命があるかぎり輝いて生きられること」、そして、「人と人とが共に生きるという基本姿勢」、これがこの映画の2大テーマです。共に生きるとは、真正面から向き合い、相手のあるがままを認めること。人って自分の身近な人であればあるほど不満が先に立ってしまいますが、相手に変わってほしいなら、まず自分が変わらなきゃいけない。それは親子でも、夫婦でも、友だちとの関係でも、すべてに通じることだと思います。

松井久子さん 痴呆症は、これまで本人にとっても、家族にとっても、悲しい病気として受け止められてきました。何もかも分からなくなって、心まで無くすかに思われてきましたが、実はそうじゃない。マイナスイメージが強すぎて、本人も痴呆になりつつある不安を持ちながら家族にも語れず、さらに、言葉が出にくくなることでコミュニケーションが取りにくくなるんです。そこに、「こんなことができなくなったの」、「そんなことを忘れたの」と叱られ、否定されることで、問題行動も出るようになる。長い人生をプライドを持って生き抜いてきて、最後にそんなこと言われて、どれだけその人のプライドを傷つけることか。
 私たちは、社会の仕組みのなかで生きるために、人とうまくいきたい、また、人によく思われたいと、「知性の鎧」を身にまとって不自由に暮らしているんじゃないかと思うんです。そういう意味では、痴呆は知性の鎧を病気によってはぎとられ、知的には生きられなくなること。けれども、感性や心はピュアなカタチで残っているんです。誰にも、「痴呆症とは、年を重ねた最終ステージで、人間の原型に返ることじゃないか」という解釈ができたら、そんなに不幸な病気じゃなくなるはず。痴呆になりかかったご本人が「最近、私、少し変じゃない?」「私、痴呆のようなんですよ」と、堂々と言葉に出して言える社会になれると思うんです。周りも「いいじゃないの、物を忘れるぐらい当たり前」「あるがままで素敵だよ」としてあげれば、穏やかに生きることができる。また、ほめられることで自信を回復していけるんです。

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