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 実際の介護を通して、介護保険にもいろいろな矛盾を感じています。これまでの福祉で無料だったサービスも、介護保険では一般で10%、収入のない人でも3%は払わなきゃいけない。だからって、何でも機械的じゃ困るんです。うちではこれまで3人のホームヘルパーさんのお世話になって、2人目のヘルパーさんとお袋の相性がすごく良かった。お袋も来てほしいし、本人も働きたいのに、ヘルパーさんの組織に年齢制限があって続けられなくなった。些細なことかもしれないけど、介護する側の気持ちももっと大切にしてほしいですね。

 また、介護される老人にも、本音が言える機関なんかがあるといいと思う。「嫁がいじめるからいやだ」とか、「本当は施設じゃなく家にいたいんだ」とか、胸のうちを聞いてあげる心のケア。老人ってすごく孤独だから、みんなもっともっと話したいはず。僕だってしゃべることが大好きだから、老後ひとりになったら寂しくてたまんないだろうなと思うんだ。身の回りの世話をするヘルパーさんだけじゃなく、老人の昔話とか何でも話を聞いてもらえるおしゃべり担当のヘルパーさんがあってもいいんですよね。

 今は介護する側だけど、自分の老後ももう目の前。独り者だし、通風持ちだし、不安はありますね。でも、俺がたまたまお袋の介護をすることになったように、その時々の状況で対応するしかない。親の介護にしろ、自分の老後の問題にしろ、大切なのは自分の生き方ですよ。生き方そのものが積極的で、毎日楽しくやってれば、突然、状況が変わったとしても、自分の人生の一環として、プラス思考で乗り越えていける。マイナス思考で生きてれば、何でも重く受け取ってしまうんだから。


 一生懸命楽しく生きるって、いい車に乗ったり、おいしいものを食べることだけじゃない。今の境遇でブツブツ言ってるヤツは、どんな境遇になってもブツブツ言うはず。まず、自分の生き方を見直さなきゃ。何が幸せかって、楽しく生きられた人がいちばん幸せだと思うし、そんな人は何をしててもイキイキしてるはずだからね。
 俺はきっと80歳になっても、 ※『パン人間』として、どこかの街角に立ってると思うよ。イキイキとしながら・・・。

撮影場所/原美術館 東京都品川区北品川4-7-25 Tel; 03-3445-0651
 
折元立身(おりもとたつみ)
1946年生まれ。 '69年に渡米、カリフォルニア美術学校に学ぶ。 '71年にニューヨークに移りナムジュン パイクの助手をつとめ、 フルクサス(パフォーマンス集団)の活動に参加。'77年帰国。人をテーマに「アジアの人の耳を引く」「パン人間」など、主に欧米で作品発表とパフォーマンスを続けている。シドニービエンナーレ展('88年)、サンパウロビエンナーレ展('91年)に参加。2000年夏、原美術館で開かれた「ART MAMA(アートママ)」と、※頭にたくさんのパンをくくりつける「BREAD MAN(パン人間)」は、日本の美術館では初の本格的な発表となった。


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