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取り組み「バリアフリーってなんだろう」

2000/04/30


バリアフリーってなんだろう

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ダイハツ工業
使う人にやさしい車椅子搭載車
  titose.gif
チトセ
お年寄りにやさしいテーブル
omron.gif
オムロン
使いやすく人にやさしいATM
  kubota.gif
クボタ
「電動ラクーター」で社会参加を
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NTT西日本
電話お願い手帳
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ノリタケ
お風呂も安心、滑りません
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三井造船
車椅子で手軽に園芸を
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大阪ガス
座ったままで、らくらく入浴
大阪同和問題企業連絡会(大阪同企連)会員企業が開発した商品のなかから、同広報誌「ホットラインODK」で掲載された「バリアフリーわが社の取り組み」の一部を紹介します。

<はじめに>

「バリアフリー」という言葉を最近よく耳にしますが、何気なく聞いたことがあっても、本当のところ意味がよくわからず、どちらかといえば自分にはあまり関係がないと思っている人が多いのではないでしょうか。

私たちは、身近な生活のなかで、高齢者や突然の交通事故・病気などにより後遺症をともなった人が、道路や屋内のちょっとした段差、駅の階段などで、障壁(バリア)を感じることがあります。これらの障壁を取り除き、目や耳が不自由な人も、車椅子で生活する人も、高齢者も健常者と同じように自由に生活ができる社会、つまり「バリアフリー」な社会を築くために私たち一人ひとりが考えていくことが大切です。

「バリアフリー」という言葉はもともと建築上の障壁を除去する場合に使用されてきましたが、最近では障壁により侵害されているさまざまな人権を回復するという意味に使用されることが多くなってきています。

今日、「障害者」や高齢者が生活の中で不便を感じることを取り除くという「バリアフリー」の観点から、いろいろな商品化に対する取り組みが進められてきています。しかし、この配慮が行き過ぎては健常者が使いにくくなり、あくまで共用できるもの(「共用品」)としてさりげない工夫が必要となってきます。これは「障害者」や高齢者の人格と自立を認めて、すべての人が健康的で安全に、かつ快適な生活を営みたいという人権意識から生まれてきたものだからです。

1.バリアフリーとは

社会生活をしていく上で障壁(バリア)となるものを除去することを意味します。もともとは段差解消などハード面(施設)の意味合いが強く、今では広く「障害者」の社会参加を困難にするさまざまな障壁の除去(制度や意識などのソフト面)をも含むようになりました。

  • 最近急にバリアフリーといわれるようになったのは
    「障害者」が社会に参画する機会が増え、健常者もともに暮らしやすい街ということを意識し始めたこと。また、日本社会の高齢化が急速に進んでいる一方で、逆に出生数の低下が問題視され、子どもを育てやすい環境をつくるという意識も高まってきたことなどが背景にあります。

  • ユニバーサルデザインとは
    アメリカの建築家ドナルド・メイスが提唱した“「障害者」だけでなく健常者にも使用でき、能力あるいは障害のレベルにかかわらず、最大限可能な限り、すべての人々に利用しやすい環境と製品のデザイン”のこと。

  • バリアフリーとユニバーサルデザインとの違い
    バリアフリーはもともとあったバリアを取り除くこと。それに対しユニバーサルデザインは最初からバリアが取り除かれている(特別な調整をしない)ことをさす。

現在はユニバーサルデザインを理想としつつ、バリアフリーの観点で実績を積み上げていこうとしている。

2.バリアフリーの歴史

「バリアフリー」の考え方は1960年代の前半に欧米で生まれました。法制化されたのは1968年アメリカで制定された「建築障壁除去法」が最初です。これは建築家の間から生まれた発想で、翌年、身体障害者が容易に使用できる施設・建物を明示する「国際シンボルマーク」が1969年に制定されました。また1990年には同じアメリカで「障害をもつアメリカ人法」が制定され、公共施設・交通・通信・雇用などで「障害者」であることを理由として差別的な扱いをすることを禁止しました。1991年国連総会は「高齢者のための国連原則」を採択し各国に高齢者対策を求めています。

日本では1983年に運輸省が「公共交通ターミナルにおける身体障害者用施設設備ガイドライン」を策定したのが最初です。また、同年はじまった「国連障害者の10年」制定の世界的な障壁除去の流れをくみ、1994年6月には「高齢者、身体障害者が円滑に利用できる特定建築物の促進に関する法律」(ハートビル法)が制定されました。

つい最近では、2000年11月に、電車やバスなどをより快適に利用できる環境の整備を促進する「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(交通バリアフリー法)が施行されています。
いずれにしても、歴史の流れから今後「バリアフリー」の施策がますます進んでいくことは間違いないでしょう。

3.バリアフリー4つの障壁

これまで、障壁(バリア)について説明してきましたが、「障害者」の社会参加を困難にする障壁を整理すると次の4つに分類することができます。なおこの4分類は1995年に刊行された「障害者白書」で施策を立てやすくするために示され、広く使用されるようになりました。

  1. 物理的な障壁:路上の放置物、自転車や電柱の障害物、歩道の段差、狭い歩道など。
  2. 制度的な障壁:各種の資格制度、入試制度、採用試験など。
  3. 文化・情報面での障壁:視覚、聴覚などによる情報収集困難。
  4. 意識上の障壁:無知と無関心による偏見と差別→あわれみ、同情→障害のない人とは異なった特例の存在と見る点(旧態依然とした「障害者観」)。

4.身近なところからバリアフリーを

バリアフリーという言葉がどちらかというと自分には関係がないと思っている人が多いのではないか、ということは冒頭で述べました。自分は健康体で元気であり段差のある歩道を歩くのに何の支障もない、そんな時「バリアフリー」という言葉は関係がないと感じるのは仕方のないことかも知れません。しかし身近な生活のなかで「バリア」を感じることは結構多いのではないでしょうか。例えば、高齢者と外出し歩道のちょっとした段差に出くわしたときなど、大きな障壁が目の前にあることを実感するはずです。

1999年度の調査では、その年に自動車事故で負傷した105万人中、16歳から24歳の負傷者が23.4%も占めています。そのうち何人が後遺症を負っているかは分かりませんが、若い人たちにとってもあながち無関係とは言い切れないと思われます。

近年、平均寿命が年々伸びてきており、高齢になるにしたがって衰えていく身体機能を、補助的な福祉用具を使って生活することは今では一般的になってきています。「バリアフリー」というのは、私たちの生活に深くかかわっているのです。

また、視点をもっと大きく広げてみた時、学歴、国籍、性の違いなどの「差別」も明確に「バリア」と言えるのではないでしょうか。これらを、「障害者」や高齢者を対象にした時と同様に「バリアフリー」にするためにどうすればよいのかを考えていかなければなりません。「すべての国民は個人として尊重される」というのは日本国憲法に定められた人権の基本原則です。「バリアフリー」の根本にあるのは人権の確立であり、障壁によって侵害されているさまざまな人権を回復するのが本当の目的です。私たちは、このことを肝に銘じておくことにより、「バリアフリー」を身近な問題として感じられてくるのではないでしょうか。

5.バリアフリー取り組み事例の紹介

さて、日本の企業においても「バリアフリー」の視点から、いろいろな分野での研究・開発への取り組みが進み、既に多くの製品、商品、サービスが私たちの生活の中で活用されています。

ここでは、大阪同和問題企業連絡会(大阪同企連)会員企業が開発した商品のなかから、同広報誌「ホットラインODK」で掲載された「バリアフリーわが社の取り組み」の一部を紹介します。

ダイハツ工業 チトセ オムロン クボタ
NTT西日本 ノリタケ 三井造船 大阪ガス