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2001/10/19
企業の環境問題


企業の環境問題への取り組み

 


<はじめに>

私たちの日々の生活は、自然界の上に成り立っています。元々人間も他の動物と同じように、個々に、あるいは小さな集団でのみ活動しているだけであれば、今日のような環境問題は発生しなかったのではないでしょうか。人間は、他の動物と異なり、その持っている知恵を使い、さらに企業・社会・国家といった、さまざまな集団を結成し、その強大な組織力で、自然を利用し、いつしか支配するようになりました。その結果、自然環境を脅かす存在となってしまいました。特に、現代社会においては、大量生産・大量消費・大量廃棄の生活・生産活動を繰り返し続けたため、自然が元来持っている自浄能力を超え、環境のバランスを崩し、ついには生物の基盤である地球にまで影響を及ぼすまでになってしまいました。

環境問題に共通する点は、人間をはじめとする生物の生命に直接関わることと、その被害の影響がゆっくりと徐々にあらわれるということにあります。現在は被害が出ていなくても、その影響は次世代以降に持ち越され、その時まで現状を放任し続ければ手遅れとなります。

環境問題の深刻さはここにあります。
20世紀の後半から、わが国をはじめ、世界各地で環境問題に関するさまざまな討議が行われ、環境問題に関するニュースや情報が毎日のようにメディアを通じて流れるようになり、ようやく環境問題に関する関心が高まってきました。企業においても、これまでの公害問題に代表されるような環境破壊に対する反省と、企業も市民社会の一員であるという自覚から、環境問題への関心を高め、環境保全と企業活動との両立を探るべく、さまざまな活動を行うようになりました。
ここでは、企業がどのように環境問題に取り組んでいるか見ていきましょう。


< 企業と環境問題の歴史を振り返ってみよう >

年表を見る(pdfファイル・139k)

・ 環境汚染は産業革命の時から始まった


イギリスで18世紀に起こった産業革命以降、ヨーロッパの工業技術は急速に発展しました。真っ黒な排煙や廃液をそのまま大気中や川や海に流す工場が各地で次々に建てられるようになりましたが、この頃の人びとにとって、工場は、自分たちの生活を豊かにしてくれる存在として、これらの排煙や廃液が問題視されることはあまりありませんでした。わが国においても、明治維新以降、富国強兵策が明治政府によって進められ「煙は国家発展のシンボル」として、黒い煙がむしろ歓迎されたこともありました。しかし、排煙や廃液などによる大気汚染や水質汚濁は、この頃から急速に進んだと言えます。
一方、早くから問題になったのは、銅などの鉱物資源を採掘する際に発生する、金属を含む汚水を河川にそのまま流した結果、流域の住民に被害を与えたケースでした。栃木県渡良瀬川流域で発生した「足尾銅山鉱毒事件」はその例です。


・ 公害の時代

第二次世界大戦が終わり、これからいよいよ平和な時代がやって来ると思われました。
わが国は、驚異的なペースで経済復興を進め、1960年代からの高度経済成長期を迎えると、終戦直後には考えられなかった先進国の仲間入りをするまでになりました。
しかし、それは同時に「公害大国」への道を進み、多くの犠牲を強いることとなったのです。工場から出される排煙や排水などは、技術の進歩に比例して、毒性の強い化学物質を含んでいるにもかかわらず、依然として「タレ流し」状態でした。ようやく問題に気付いた頃には、4大公害(イタイイタイ病(富山)・熊本水俣病・新潟水俣病・四日市ぜんそく(三重))など、世界に類を見ない悲惨な事件を引き起こしてしまいました。

また、この頃急速に普及した自動車の排気ガスによる気管支炎やぜんそくなどの被害や鉄道や自動車の騒音など、企業の経済活動に起因する公害事件も全国で頻繁に起こりました。企業や自治体を相手取った訴訟も相次いで提訴され、この時以降、企業は加害者、住民は被害者という概念が定着し、現在もなお根強く残っています。国もこのような事態を重視し、1967年に公害対策基本法を制定し、大気汚染・水質汚濁・土壌汚染・騒音・振動・地盤沈下・悪臭の7つの公害についての対策規定を設けました。その後、1970年には、公害14法案を成立させ、公害発生の際の罰則規定や、有害物質の量、騒音基準などが設けられました。そして、1971年には、環境対策の専門官庁である環境庁(現環境省)が発足し、企業もこれに併せて対策を行うようになりました。


・ 企業の環境対策と新たな環境問題

わが国の環境基準を定めた法律はかなり厳しいものになっています。それをクリアするために、企業は研究と努力を重ね、優れた公害防止技術を開発することに成功しました。その結果、かつての公害事件のような、短期間に大勢の人の生命をおびやかすようなことは、ほとんどなくなりました。
ところが1980年代に入ると、新たな環境問題が持ち上がってきたのです。「地球環境問題」と呼ばれるこの問題について、環境庁(当時)は次の9種類を挙げています。


 

オゾン層破壊 熱帯林の減少 海洋汚染
地球温暖化 砂漠化 公害・汚染物質の国際的移動
酸性雨 生物種の減少 途上国の公害


「地球環境問題」の特徴のひとつは、これまでの公害事件と異なり、加害者と被害者とが明確に区別できないことです。海洋汚染を例にとると、多数の家庭からの生活廃水がその原因のひとつであったとしたら、その住民は、加害者でもあり、同時に被害者でもあることになります。また、特徴のもうひとつは、被害の影響範囲もこれまでの河川の流域や工場付近などの限定的なものではなく、地球規模に及ぶ広範囲なものになっている点にあります。

これらの問題の解決に向けて、国際的な取り組みがようやく始まっています。1997年12月に京都で開かれた地球温暖化防止京都会議や、その際採択された「京都議定書」などがその例でしょう。

「地球環境問題」という新たな環境問題に対しても、企業は無関係であるとは言えません。例えば、オゾン層を破壊する「フロンガス」は企業が製造したものですし、酸性雨の原因である大気中の硫黄酸化物や窒素酸化物は、企業活動に使用される、ディーゼル車の排気ガスによって発生したものが多くを占めています。これらに対して、企業もさまざまな取り組みを行うようになってきました。

2001年には化学物質の管理強化を目的にPRTR法が施行され、環境に配慮した物品購入を促進するためのグリーン購入法が施行されました

「地球環境問題」を解決に導くためには、人間ひとりひとりの行動と、企業や国・自治体の努力、そして国際的な協力が必要となっており、それらが相互に連携しあうことが重要となっているのです。


< 企業の環境問題への取り組みを見てみよう >

これまで見てきたように、企業に環境問題の責任の一端があることは事実です。このことは、言い換えれば、企業の努力によって環境問題は解決もしくは改善されるということであり、企業にはその義務があります。今、企業は、地域社会ひいては地球社会の一員としての自覚を持ち、環境問題にさまざまなかたちで取り組んでいます。
ここでは、その取り組みについて、具体的な事例を挙げて紹介します。


・ 環境に与える影響ができるだけ少ない製品をつくる。

日本企業の工業技術力が世界トップクラスにあることは、よく知られています。しかも日本企業は過去の公害対策のための厳しい環境基準の達成と、2度のオイルショックの経験により、世界最高レベルの環境保全技術を保有しています。その中で、これまでより環境に与える影響の少ない、もっと進んで、環境に全く影響を与えないような製品を開発しています。

クリーンな自動車(pdfファイル・70k)
自然に還るプラスチック(pdfファイル・73k)
ダイオキシンを発生させない小型焼却炉(pdfファイル・61k)

・ 環境を守るための技術を開発する。

よく知られていることですが、本来、海や川など自然には自浄作用があり、多少のことならば、人間が手を加えなくても浄化されるものなのですが、現在の環境破壊はこの自浄作用を超えたペースで進んでいます。したがって、汚染された環境をもとどおりにするためには、人間の手を加えて、つまり技術を用いて浄化・保全することが必要となるのです。

シリコーンが老木治療に一役(pdfファイル・154k)
ヘドロを除去する技術(pdfファイル・187k)
土のクリーニング?土壌汚染への取り組み(pdfファイル・86k)

・ リサイクルの技術。

リサイクル(資源の再利用)は、資源の乏しい日本では、最も期待されている技術ですが、地球環境の保全にとっても重要です。ところで、リサイクルは、単に廃品を再利用するというものではなく、廃品を再び製品・商品にすることであり、時には、リサイクル前と後では全く異なるものになることもあります。リサイクルにはかなり高度な技術が必要とされ、ここでも日本企業の高い技術力が発揮されています。

ペットボトルがワイシャツになる?(pdfファイル・91k)
ガラスびんを他の用途に利用する(pdfファイル・100k)
プラスチックを石油に戻す(pdfファイル・32k)
ゴミを燃料として電気をつくる(pdfファイル・65k)  

・ 企業の活動自身の中で環境に与える影響を少なくする。

工場でものを作れば、汚水やばい煙が発生し川や空気を汚します。ビルやダムを建設すれば、産業廃棄物を排出します。トラックでものを運べば、排気ガスで空気を汚します。つまり、企業が活動すること自体が、環境に影響を与えているのです。そこで企業は、努力によって、企業活動を維持しながら環境に与える影響を少なくしようとしています。

ビールびんの回収率は99%(pdfファイル・48k)
商品の梱包はリサイクルを考えて(pdfファイル・78k)
陸運業界で進む環境対策(pdfファイル・82k)

・ メーカーでなくてもできる環境保全商品の開発

日本の企業の高い技術力をもって、環境を保全する製品の開発をしていることは先にも説明しました。しかし、環境保全のための商品は、工業製品だけとは限りません。銀行・生命保険会社・損害保険会社などの金融機関でも環境関連商品を開発・販売しています。

エコファンド(pdfファイル・81k)

・ 企業の社会貢献の一環として環境保全に取り組む。

企業が地域社会・地球市民の一員として、本来の活動を離れて取り組む社会貢献活動の中で、環境保全に積極的に取り組んでいます。環境保全のための基金の設立や、地域住民の方々との環境保全に関するボランティア活動への参加などが挙げられます。

ナショナル・トラスト運動などボランティアへの参加(pdfファイル・70k)

・ 企業の環境問題への取り組みを公開します。

これまで見てきたように、企業の環境問題への取り組みは、さまざまなかたちで、今後ますます活発になっていくものと思われます。そして、利益ばかりを追い求めているのではなく、人権問題や環境問題に真剣に取り組んでいる企業が、本当の「良い企業」と言われる時代がやって来ます。

現在、企業が環境保全にどのくらい取り組んでいるか、また、どのくらいの成果が顕れているかを、広く公開する企業が増えています。ところで、その公表された企業の成果を社会が評価するために、一定の統一された基準が必要になってきました。現在では、その統一基準は国際規格となって定着しています。

「環境コスト」と「環境効果」を公開します・環境会計(pdfファイル・48k)
ISO14000s(シリーズ) (pdfファイル・84k)

< おわりに >

私たちがこの社会を生きている今、この間にも、残念ながら「地球環境問題」は間違いなく進行しています。だからといって、人間の経済活動や企業活動を止めることは、現実的ではありません。大切なことは、環境と経済の共生にあるのです。そのために企業の果たさなければならない役割は、とても大きいと言えるでしょう。そして、これからの社会が求める企業像とは、自社の利害だけでなく社会全体の利害を考える企業であり、逆に言えば、社会全体の利害を考えない企業は存在価値がないということになるのです。

21世紀は「人権の世紀」と呼ばれるとともに「環境の世紀」とも呼ばれます。環境問題は、人間の生命に関わる人権問題です。人権と環境が大切にされる住みよい社会と地球をつくるために、人権問題とともに環境問題に積極的に取り組むことが、これからの企業に強く求められています。

制作・協力 大阪同和問題企業連絡会

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