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DVD「職場で起こるハラスメント対策」

2013/03/21


 

 

 

 

1.テーマ:ハラスメント

2.教材:DVD

3.ねらい

4.話し合いのポイント

 

 

 

 

1.テーマハラスメント

 

2.教 材

(1)タイトル
DVD「職場で起こるハラスメント対策の基礎知識」(50分)

(2)制作
制作・著作日本経済新聞社
監修山田秀雄(弁護士)、菅谷貴子(弁護士)、岡田康子(株式会社クオレ・シー・キューブ代表取締役)
制作年2009年
定価90,300円(税抜金額 86,000円)
問合わせ先:日本経済新聞社

(3)内容
パワーハラスメントの加害者として訴えられた主人公が、配転の後、失意のうちに支社へ赴任していきます。はじめは「部下の成長を願って、厳しく指導をしただけなのに、何で俺だけが?」という疑心暗鬼に陥っていましたが、『心の声が聞こえるラジオ』と出会い、客観的な立場から支社で起こる各種ハラスメントを観察するようになります。

転属先の支社では、日常的に上司が部下に対して暴言を吐いたり、部長が若手社員に「お前がしっかりしないから、課長が苦労するんだ」と言いながら、頭を書類で叩いたりしています。支社長は、お茶酌みは女性の仕事として若い女性社員に命令したりしています。

そんなある日、支社長の提案で主人公の歓迎会が行われ、女性の派遣社員が先に帰ることを告げると、上司から「男か!」という相手の尊厳を傷つけるような発言があったり、若い男性社員に上司が「俺の酒が飲めんのか!」といって飲酒を強要しています。また、支社長は若い女性社員の手を握って話をしています。

翌日も、職場では部長が権限をちらつかせながらデートを強要しています。また女性の正社員が同性の派遣社員を無視したり、力仕事は男性の仕事としてあたりまえのように男性社員に頼んでいます。ハラスメントに気づいた主人公は、働きがいのある職場にしようとそれぞれの思いを聞いていきます。その後、本音で話ができるように支社全体で会議が持たれるようになり、職場の空気も明るくなっていきました。

3.ねらい

ハラスメントは、無意識のうちに行われることが多く、それがハラスメントであることに気づかずに加害者になる恐れがあります。この作品では職場で起こるさまざまなハラスメントに焦点をあて、その内容を理解すると同時に、防止への実践をうながしています。

4.話し合いのポイント

(1)このビデオを見て、パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、ジェンダーハラスメント、アカデミックハラスメント、モラルハラスメントなどで気づいたこと、考えさせられたこと、更には職場で起こりそうなハラスメントについて話し合って下さい。

(2)ハラスメントを防止するための対策の一つである、チェックリストの整備について話し合って下さい。 

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【参考資料】

「ハラスメントのない職場をつくるために」

高橋貞夫さん(人と組織研究所代表)

リスペクトマインドの大切さ

最近、過労や仕事上のストレスによるメンタルヘルスの問題や、職場におけるハラスメントやいじめなど人権に関わる課題も増えてきました。しかし、現在はその防止対策ばかりとなり「この言葉はダメ」とか「ここまで言ってよい」というものが目立つようになっています。

言い換えれば「頭が痛いから頭痛薬を飲む」といった処方で「どうすれば頭痛にならない体をつくるか」が欠落しているように感じます。安心して働ける職場とはお互いが「リスペクト(尊敬)し合いながら、コミュニケーションのとれた職場をいかにつくっていくこと」が大切になってくるのは言うまでもありません。一番大事なことはお互いが「関心=関わる心」を持てるかどうか、関わる心の薄い職場では安心して働けないのです。

ハラスメントのない職場づくりの基本は日頃の声かけであり、それがお互いの信頼関係を構築していくのです。昨今の学校のいじめ問題などは、関わりたくない気持ちが優先し関心を示さなかったために大きな問題となったのではないでしょうか。やはり一番大切なことは対人関係の公平性、すなわちお互いの人格を尊重し、公平な対人関係が結べているかがポイントです。

何気ない気づきを大切に

以前ある工事関係の職場で声かけの「見える化実験」をしました。リーダーがメンバーの名前を手帳に書き、声をかける度に正マークを書いていくものです。実験以前のリーダーは全員に平等に声をかけている「つもり」でした。しかし実際の声かけには偏りがあったのです。わずか7人のメンバーでしたが、1ヵ月の間で一番声をかけたメンバーは30回、一番少なかったメンバーは3回と出てしまいました。リーダーは慌てましたが一番少ないメンバーと打ち解けて話し合ったそうです。そうするとメンバーが「何故自分だけが事業所から遠い工事ばかりなのか?」「何故難しい工事ばかりを割り当てるのか?」との疑問の声が出てきました。このメンバーの帰社時間はいつでも誰よりも遅いのです。

リーダーに悪気はなくメンバーに関心を示さずに、帰りが遅いので声をかける場面が少ないことに気付いていませんでした。そこで改めてメンバーに詫(わ)び、公平な距離の工事分担を約束し、このメンバーの技術スキルが優れているので、自然と難しい工事を分担させていましたが、必ず補助要員を付けてその人間にスキルを付けさせて徐々に担当させるようにしたのです。

あのままであれば公平性に欠けた職場となり、パワーハラスメントの問題につながっていくところだったでしょう。これからは「ワーク・エンゲージメント=生き生きと職場で熱意を持って働くこと」が求められ、気楽にまじめな話ができる職場づくりが何より大切となってきています。

兵庫県・(公財)兵庫県人権啓発協会発行
「ひょうご人権ジャーナル『きずな』2012年10月号」 より転載