ふらっと相談室

事例で納得Q&A

「事例で納得Q&A」内で検索

カテゴリー一覧に戻る

「在日コリアン」


3 在日コリアンは民族名と日本名がある理由

在日コリアンには民族名(本名)と日本名(通称名、通名)があるということですが、それはなぜですか。また、どのように使い分けているのですか。

まず、在日コリアンの中にもさまざまな考え方の人がおり、どのような環境(家庭、地域、職場など)で生活しているかによっても、名前の使い方は人それぞれ違うということを知っておいてください。民族名と日本名、どちらを名乗るのかは、あくまで本人の選択であり、第三者が勝手に決めつけることができるものではありません。一方で、在日コリアン一人一人が名前を選択するにあたり、日本名の使用を強要するような社会的・歴史的な背景が存在することも間違いありません。

「日本名」は、日本が植民地支配していた朝鮮に対して行なった「創氏改名」(そうしかいめい*)がつくり出したものです。日本の敗戦後、朝鮮は植民地支配から解放され「創氏改名」も廃止されましたが、日本で暮らし続けることになった人のなかには、本名(民族名)で生活することに不安を感じる人が多くいました。貧困と差別のなかで生き抜くために、日本式の名前を「日本名」として使わざるを得なかったのです。

また、かつて外国人登録証明書には「通称名」も記載されるようになっており、その日本式の通称名は就職・就学・契約、さらには運転免許証などの公的書類に使用することが許可されていました。日本政府は、在日コリアンが日本名を名乗ることを躊躇する原因ともなっている社会的差別、制度的差別の撤廃には消極的な一方で、通称名の使用を認めることによって、 在日コリアンが日本名で生活することに加担したのです。一方、外国人登録証明書、出入国関係書類、母国の戸籍など正式な書類には、民族名が使用されます。本人が日本名記入を希望しても、受理されません。

現在の社会において、民族名を名乗って在日コリアンとして堂々と生きていこうという運動があり、民族名で生活している在日コリアンも少しずつ増えています。子どもに民族名だけをつける人もいます。ただ、残念なことに、民族名を使うことで就職や入居、人間関係のなかで差別を受けやすいという現実があります。それら差別を回避するための手段として日本名を選択する在日コリアンの姿があることも間違いありません。更には世代を重ねるなかで、生まれたときから日本名しか使用したこともない人もたくさんいます。そのような人たちの個人的な感覚では、日本名を名乗ることが「自然」と感じてしまうのも無理はありません。

個々の在日コリアンは、違いが差別につながりやすい日本社会の中で、名前を使い分けたり、民族名だけの生活をしようとしたりと、さまざまな迷いをもって生きているのです。

*【解説】創氏改名(そうしかいめい) 日本は、朝鮮・台湾などの植民地に対して行なった「皇民化政策」の一環として、1939年11月に朝鮮総督府は朝鮮民事令を改訂し、朝鮮古来の姓名制を廃止して、氏を創設することとした。 1940年2月11日 から6カ月間を創氏改名の届け出期間とし、322万戸(約80%)が届け出た(設定創氏)。また、届け出ない者は従来の姓をそのまま氏とした(法定創氏)。同時に総督府は、日本式氏名を名乗ることを奨励した。創氏改名の届け出は「任意」とされたが、届け出ない者に対して、学校での教師の対応や生業の許認可など、生活のさまざまな局面で社会的制裁や圧迫が加えられた。その結果創氏改名は実質的に強制的なものであり、民族のアイデンティティを奪うものだといえる。1945年、植民地からの解放によって朝鮮古来の姓名制に復帰した。

*執筆協力:NPO法人 多民族共生人権教育センター