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精神障害を理由に入居を拒まれた

姉は精神障害者保健福祉手帳2級をもっています。賃貸住宅に一人で住んでいるのですが、妄想がひどくなる時もあり、現在は精神病院に入院しています。現在、病院から退院の許可は出ているのですが、家主が戻ってくるのを拒み、ほかのところを探すよう言われています。

精神障害のある人は対人関係で気を遣う人が多く、環境に慣れるのに時間がかかるものです。通院先との距離も問題になってきますし、次のところを探すとなると労力も大変です。たとえ新しく見つかったとしても、その環境が病状に対してどう影響するかも不安なところです。
もとの住居に戻るためには、まず家主による明け渡し請求が正当な理由によるものかどうかを検討する必要があります。正当かどうかは家主と借家人、それぞれの諸事情を考慮して判断されるもので、身近な市町村で行なわれている法律相談などを利用して専門家に相談されるとよいでしょう。
もしも家主が正当な理由もなく、ただ漠然と不安に感じているだけなら、生活支援センターや地域の保健センターなどの協力を得て、ホームヘルパーや作業所などを活用し、支援を受けながら地域で生活していくという姿勢を示すことも必要でしょう。
また、家主との関係がこじれて家主が家賃の受け取りを拒めば、とりあえず家賃を法務局に供託(法令の規定により、金銭・有価証券・商品その他のものを、一定の者に寄託すること)して交渉することになります。裁判所による調停で話し合うこともできますが、調停が不調に終われば後は訴訟しかありません。いずれにしても紛争となれば大変ですので、病状を悪化させないように医師ともよく相談しながら、弁護士など専門家の協力を得て、家主との対応を進めていくのがよいでしょう。
公営住宅においても、身体障害や精神障害の状況によって、入居が制限されています。公営住宅法施行令第6条1項は、「身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とする者でその公営住宅への入居がその者の実情に照らし適切でないと認められる者」を「入居者資格」から除外していました。これは2000年の改正によって、「常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることができず、又は受けることが困難であると認められる者」と変わりました。常時の介護が必要であっても、介護が受けられるのであれば、入居することができることになりました。とはいえ、障害の状況や介護の有無など、障害者の欠格条項が残されています。
公営住宅への入居が障害の状況などによって制限されている以上、民間の賃貸住宅もそれにならうことになりがちです。障害者である前に人間として居住権を保障されるべきだという観点から、国が率先して欠格条項の見直し、撤廃を進めることが望まれています。