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精神障害にはどんな欠格条項がある?

精神障害者の場合、いろいろな資格について欠格条項があると聞きました。具体的な内容を教えてください。

有資格の職業については、ある条件をもつ人にはその資格を与えないことを法令が定めている場合があります。たとえば未成年者は医師にはなれませんし、破産宣告を受けた人は会社の取締役にはなれません。これを欠格条項と呼んでいます。また、視力のない人や聴力のない人は運転免許をとることができませんがこれらも欠格条項に含まれます。
欠格条項には、ある事由があれば必ず資格を与えない絶対的欠格条項と、その事由があっても程度により資格を与える相対的欠格条項があります。
精神障害を理由とする欠格条項は、国だけなく地方自治侭でも数多くありました。公園や銭湯への入場までも拒否されていました。また、精神障害者は調理師や理容師、美容師になれませんでした。これは「精神障害者は何をするかわからない危険な人」、あるいは「自分のこともできない無能力者」といった偏見に基づいたものと考えられます。精神障害者は精神疾患の治療を受けながら生活をしていますが、それは糖尿病の人や高血圧症の人が治療を受けながら社会生活を営んでいるのと変わりありません。また、精神障害のために社会生活上の困難さをもっていますが、これも援助があれば克服できる社会的なハンディにすぎません。
欠格条項は精神障害者の自立と社会参加を阻むものとして強い批判にさらされ、見直しが進められています。調理師や理容師などの資格は相対的欠格条項に改善されました。しかしまだ、さまざまなところに残っており、さらに見直していく必要があります。

【解説】欠格条項
「耳が聞こえない」「知的障害がある」「心の病にかかっている」など、障害や病気を理由に免許を交付しなかったり取り消したりすることを定めているのが「障害者欠格条項」。障害があったり病気にかかっている人を個人ではなく「ひとくくり」でとらえ、「何もできない」「何かをさせると危ない」と決めつけ、社会で暮らしたいという思いを問答無用ではねつけるという点で、欠格条項は障害や病気をもつ人の人権を侵害しているといえる。
このような欠格条項を見直す作業が1999年の政府方針により始まった。各省庁が見直し対象に指定した63制度について作業を進め、約半分にあたる制度の見直し法案が2001年の通常国会で成立した。医師法など27法令のうち、欠格条項を撤廃したのは栄養士、調理師、製菓衛生士、検察審理員で、残りの多くの法令には、試験に合格しても免許を与えないことがある対象として「心身の障害により業務を適正に行うことができない者」という条文が入った。つまり「障害や病気によって免許を与えないことがあり、くわしくは省令で決める」という形で実質的に欠格条項を残した。
また、地方条例には今も数多くの欠格条項がある。教育委員会、公安委員会の傍聴制限が圧倒的に多く、プールや老人福祉センターなど公共施設の利用制限もある。精神障害を事由としたケースが多いのも地方条例における欠格条項の特徴である。