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2 妊娠したことを会社の上司に報告すると、退職を勧められました。

私は、現在、妊娠中で切迫流産の恐れがあり、先月から休職しています。勤務先の会社では、結婚したら退職する習慣があり、妊娠しての産休、出産後の育児休業も今までに例がありません。職場の上司からは、「子どもができたら、退職したほうがいい。」と言われました。私としては、育児休業をとった後に、復職して仕事を続けたいのですが。

 母性保護に関しては、男女雇用機会均等法、労働基準法、育児・介護休業法に定めがあります。結婚、妊娠、出産、産前産後休業の取得を理由として退職する制度を設けることや解雇することは、男女雇用機会均等法によって禁止されています。また、妊娠中または出産後の女性労働者に母性健康管理の措置を行うことが企業に義務づけられています。労働基準法では、産前・産後の休暇、育児休業法では育児のための休暇が定められており、休暇に関して当然請求し、取得する権利があります。

 しかしながら、これら妊娠・出産・育児・介護のための休業は、企業内では労働者の個人的な事情であると考えられがちです。「育児短時間制度は冗談でない。生産性も下がるし、仕事の完成度も下がる」「休業期間も、その業務を空白にはできないので人を補充する。そうなると戻ってきても空きはない」「配置転換の配慮義務を盾に取られて、簡単な仕事に就かれても困る」と職場からの本音も聞かれます。

 こうしたことから、会社には迷惑をかけたくないと考えて自ら退職する人は少なくありません。また、契約・派遣・パートなどの非正規労働者では、妊娠、出産時に雇用を維持できる人は多くはありません。これらの理由で、そのつど退職しなければならないとすれば、結婚・出産し、さまざまな家族的責任を果たしながら働き続ける事は、きわめて不安定で困難と言わざるをえません。

 男女雇用機会均等法が制定されて26年目となり、厚生労働省は、毎年6月に「男女雇用機会均等月間」と定め、男女機会均等について、労使をはじめ社会一般に認識と理解を深める機会として、推進活動を実施しています。職場で男女平等を確立するために、何年もかけてさまざまな対策が実施されているにも関わらず、なぜ昔と実態は変わっていないのでしょうか。

 「男性が仕事場で働き、女性が家庭で家事をする」という日本の社会通念は依然、強いものがあります。その背景には、男性の長時間労働という問題が残っています。この解決もさながら、男女関係なく、自己のキャリア(仕事を通じての人生)を積み上げていくには、働く者自身が価値観を見つめなおす事が重要です。

 母性保護に関する問題解決には、労働組合、労働事務所、労働基準監督署への相談をお勧めします。

執筆協力団体:連合大阪なんでも相談センター「労働相談Q&A」