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娘が上司から悪質なセクハラを受けた。親としてどうすれば?

娘(25歳)がセクハラを受けました。上司とお酒を飲んだ帰り道、車に連れ込まれて襲われたというのです。大声で抵抗して何とか逃れたらしいのですが、大きなショックを受け、通勤もつらそうです。私は日ごろから結婚前の娘が遅く帰ってくることに腹を立てていたので「やっぱり……」と思うところもありますが、娘がかわいそうでもあります。表ざたになると会社にもいづらくなるだろうし、かといってこのまま泣き寝入りというのも許せない気もします。こんなとき、どうすればいいのでしょうか。

日ごろから心配していたことが現実となり、驚きととまどいで混乱されていることと思います。けれども、娘さんは話しにくいことを母親のあなたに打ち明けたのです。娘さんの気持ちに寄り添いながら、いっしょにどうしたらいいのか考えてみましょう。
まずはっきりしておきたいのは、今回のことは「夜遅くなったから」「男性とお酒を飲んだから」という原因によって起きたことではありません。まして、娘さんにすきがあった、不注意だったということではないのです。その男性上司が、娘さんの気持ちを無視してとった行動が問題です。
娘さんにあれこれ根掘り葉掘り聞くのではなく、ゆっくりと「気持ち」を聞いてあげましょう。警察に届けたり、医者に行って診断書を取るなど、今後のことについても娘さんの気持ちを第一にしてください。
あなた自身の不安やとまどいは娘さんにぶつけるのではなく、こういった問題の相談窓口やカウンセリングを利用してください。また、娘さんに対しても、気持ちを整理するには相談やカウンセリングという方法もあるということをアドバイスしてあげてください。

【解説】セクシュアル・ハラスメント
セクシュアル・ハラスメントとは、「相手の意に反した、性的な言動を行ない、仕事を遂行するうえで一定の不利益を与えたり、またはそれを繰り返すことによって、就業環境を著しく悪化させること」をいう。
1999年4月に施行された改正男女雇用機会均等法の指針では、セクシュアル・ハラスメントを対価型と環境型の二つに分けている。
対価型は、地位利用型ともいわれ、仕事上の権限や地位を利用して労働条件の変更と引き換えに、性的な要求を行なうもの。典型的な例としては、「付き合ってくれたら昇進させてあげる」「言うことを聞かないならやめてもらう」などと圧力をかける。
環境型とは、労働条件の変更は必ずしも伴わないが、性的な言動か繰り返されることで、働きにくい職場環境をつくるもの。具体的には、胸や腰を触るなどの身体的接触行為、性的なうわさを流すなどの言葉によるもの、ヌード写真を張るなどの視覚による嫌がらせがこれに相当する。
セクシュアル・ハラスメントは、個人の尊厳・名誉・プライバシーの侵害であり、性的自己決定権の侵害であり、働きやすい環境で働く労働権の侵害といえる。