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ふらっとへの手紙

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2014/04/30
ふらっとへの手紙 村木真紀さん fromLGBT vol.1


性的少数者が働きやすい職場づくりをめざして 特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ 村木真紀さん



働きやすいはずの職場で体調を崩して

 ここ1、2年でLGBTという単語をあちこちで見かけるようになりました。LGBTとは、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)の頭文字を並べたもので、性的少数者を意味します。私たち虹色ダイバーシティは、LGBTをはじめ性的少数者がいきいきと働くことができる職場づくりを目指して2012年に設立、2013年にNPO法人化しました。企業や行政を中心に講演や学習会の講師を派遣したり、企業や団体内での性的少数者に関するリサーチや研修をはじめコンサルティングサービスをおこなっています。

 こうした活動の原点には、私自身が当事者(レズビアン)として息苦しい思いをしてきたことがあります。大学を卒業後、いくつかの企業でコンサルタントとして働いてきました。けれど2011年前後に夜眠れなくなるなどして体調を崩し、休職を余儀なくされました。ちょうどレズビアンの友人も同じように会社を休んでいて、話してみると「この会社には自分の居場所がない気がする」「がんばっても報われる気がしない」など共通のしんどさがあるのがわかりました。

 最初は女性であることでぶつかる壁なのかと思いました。でもよく考えてみると、私や友人の勤務先は男女で待遇や仕事に差がある企業ではありませんでした。そこで「もしかしたらレズビアンだから?」という意識をもつようになったのです。

  日常的な雑談を避ければ仕事に支障が生じる

 改めて考えてみると、私は会社ではプライベートな話を一切していませんでした。「仕事とプライベートは別、わざわざ話す必要はない」と考えていたからです。けれど実際に働いてみると、みんな家族のことを当たり前に話しているのです。子どもが何歳で何人いるとか、参観や運動会があるから休むとか、いろいろな情報が回ってきて否応なく知ってしまうわけです。

 この活動を始めるまでごく親しい友人にしかカミングアウトをしていませんでしたから、当然会社でもプライベートなことを話さないようにしていました。ランチや飲み会に誘われても、「つきあってる人はいるの」などと訊かれるのが苦痛で断っていました。日常的な雑談を避けていると、仕事での関係づくりも難しくなります。そんなことが重なるうちにストレスが嵩じてしんどくなったのだと思い至りました。

 インターネットなどで調べると、イギリスやアメリカではLGBTであることがストレスになると仕事の生産性が落ちるという調査結果があり、大きな企業がLGBT対応に取り組んでいることがわかりました。さらに復職後、イギリスにいる友人のところへ遊びに行った際にLGBT団体のオフィスで「会社では異性愛者のふりをするしかなく、自分が自分でないような気がしてしまう」「困った時、誰に相談すればいいのかいつも迷う」などといったコメントのある報告書を読みました。「私たちと一緒だ。こうした取組みは日本でも必要なのでは」と考えたのが活動の始まりでした。

アライ(支援者)を増やしながら組織の取組みを促す

 2013年には当事者アンケートをおこないました。その結果、イギリスやアメリカの調査結果と同じように、差別的なニュアンスで性的少数者をからかうような雰囲気に圧力を感じていること、性的少数者であることを隠さなければならないことで常に緊張や不安にさらされているなどの状況があきらかになりました。特にトランスジェンダーの方は性別や本名が記載された住民票などを提出することができないなどの事情から非正規雇用でしか働けない、あるいは差別や偏見のために職を転々とせざるを得ないといった厳しい状況に置かれていることがわかりました。

 性的少数者の問題に取り組むなかでの課題は、カミングアウト(公表)している人が少ないためにデータが圧倒的に足りないことです。しかし私はカミングアウトは推奨しません。日本ではまだ性的少数者を守る法律がなく、カミングアウトすることのリスクが高いからです。最近はアライ(Ally:性的少数者の権利や活動に賛同、支援する人)の存在が注目されています。たとえば職場にアライが一人いるだけでも当事者は心強く思います。アライとなってくれる人を一人でも多く増やすことも私たちの重要な活動です。

 ここ1、2年の間に性的少数者に関するニュースが海外も含めて飛躍的に増え、社会的な注目度や、企業や行政のみなさんの意識もかつてないほど高まっているのを実感しています。また男女雇用機会均等法のセクハラ指針が見直され、2014年7月からは性的少数者に対する差別的な言動もセクハラに当たることになりました。このタイミングでしっかりと性的少数者が働きやすく、生きやすい社会をつくっていきたいと思います。さまざまなアプローチの仕方があるでしょうが、私はコンサルタントという自分のキャリアと経験を生かして企業や行政といった組織への働きかけをしていきたい。大きな企業が動けば、日本社会に対する強い発信力になると考えるからです。(2014年4月談)

●関連サイト/性的少数者の基礎知識(虹色ダイバーシティウェブサイトより)

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