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2000/06/22
シリーズ『福祉の仕事カタログ』 介護福祉士


シリーズ『福祉の仕事カタログ』

「福祉関係の仕事をしたいなあ」という人が増えてきているようです。でも一口に「福祉関係の仕事」といっても、実にさまざまな職種があります。今、注目されている仕事から、あまり知られていないけど面白い仕事まで、福祉の分野で働きたいと考えているあなたに、いろいろな仕事の現場と先輩からのメッセージを伝えます。
介護福祉士とは? 奥田康裕さん
「あんたみたいに頼りないもんにやってもらわなあかんのか」。威勢のいいおばあちゃんの言葉に苦笑しながら、「そうやねん、行こうな」と車椅子を押す。1999年春にオープンしたばかりの、大阪・西成区の特別養護老人ホーム「まちかどホームすずらん」。奥田さんはここで、介護福祉士としてのスタートを切った。

27歳で資格を取ったばかり。高校卒業後は、大手電機メーカーの半導体製造工場で働いた。
「自分のやりたいことが、わからなかった。こんな状態で大学に行っても、親に負担かけるだけやと思って就職したんです」。
当然「どうしてもやりたい仕事」ではなかった。ただ年数を重ねるにつれて、機械相手の仕事に物足りなさを感じ始める。そんな時、祖父がぜんそくを理由に療養所に入るという出来事が起きた。
「本当は療養所に入るほどのぜんそくじゃなかった。お嫁さんにあたる伯母との折り合いが悪くて、いわゆる『社会的入院』というやつです。どこも悪くないのに入院して、食べるか寝ているしかない。面会に行くたびに、気力も体力も落ちていくのを見るのが何とも切なかったです。人間は周りの環境で死を早めるんだと感じました」。

祖父はその2年後に亡くなり、奥田さんの心に割り切れない思いが残された。結局、4年目に仕事を辞め、ワーキングホリデー制度を利用してオーストラリアへ。1年間、英語を勉強しながら、自分のこれまでの生き方や福祉について考えてみたかったという。

「オーストラリアのお年よりたちはバリアフリーの平屋に住み、趣味を楽しみながら暮らしていました。子どもたちとは同居しないのが当り前。でも少しも孤独な感じがしない。日本でもこんな老後の暮らしができればいいなあと思いました」。帰国した奥田さんの胸には、「どうしてもやりたい仕事」がはっきりと存在していた。それは、高齢者や障害者ができるだけ自立し、生活を楽しむのを支える「介護福祉士」だった。

機械メーカーの期間社員として働いて学費をため、福祉の専門学校へ入学。2年で卒業し、「すずらん」にワンフロア全体の責任者、フロア長として採用された。常勤、非常勤合わせて8人のスタッフの中心となって動く。入居者の多くが車椅子を必要とする状態で、痴呆症を発症したり、あるいはその傾向がある。

「介護する人との信頼関係がないと、成り立たない仕事です。難しいけど、こちらが心を開けば相手も開いてくれる。突拍子もない行動のなかに、どんな理由があるんだろうと考えて対応するのも楽しいですよ。人間関係の面白さ、複雑さが味わえる仕事だと思います」

回り道をした分、気負いも使命感もない。ただ心がけているのは「普通の生活を、どれだけ豊かな気持ちで過ごせるようにできるか」ということ。
「高齢者の介護から始まったけど、今後は障害者、特に療育的な視点が必要な障害児にもかかわっていきたい。今の僕には難しいので、もっと勉強と経験することが必要ですけど….。答えも終わりもない仕事だから、いつも視野を広げる努力はしていきたい」。
親には早く結婚しろって言われてるんですけど、と照れ笑いする奥田さん。それはもうしばらく「お預け」となりそうだ。


介護福祉士とは?
身体や精神に障害をもつ人や高齢者の日常生活をサポートする。食事や入浴、排泄など本人の介護はもちろん、家族などの介護者への助言、援助も行う。障害者施設や老人ホームで働く場合と、在宅介護がある。資格を取るには、養成施設を卒業するか、国家試験に合格することが必要。
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