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高齢者

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2000/06/22
みんなでひとつの大家族 ライフ&シニアハウス緑橋


シリーズ4回目
「心豊かな老い」
『終の住処を考える』

「人生の最後は、わが家で迎えたい」。つい最近まで多くの人たちが縛られていた『持ち家神話』。だが、少子高齢社会になりつつある今、子どもの世話にならず、住まいも、暮らし方も既成概念にとらわれない、自分らしい老後を模索する人たちが増えてきた。人生の終末を見すえた安心の住処探しだ。昨年7月にオープンした「ライフ&シニアハウス緑橋」は、そのひとつ。信頼できる医師やハウス長とともに、介護の必要な人も健康な人も、入居者同士が助け合って暮らす地域に密着した都市型福祉マンションである。



地下鉄中央線緑橋駅から徒歩2分。大阪の下町、東成区に建つ「ライフ&シニアハウス緑橋」は、コンクリート打ちっ放しの都会的な外観だ。通りに面してウッドデッキが広がり、ちょっと中をのぞきたくなるような総ガラス張りで、従来の有料老人ホームとはかなり違うカジュアルで開放的な雰囲気がいい。
10階建ての建物は、 玄関を入ると、事務室にロビー、その奥がウッドデッキに続く食堂兼多目的ホールとなっている。2~3階の24室が介護の必要な人のフロア、 4階から上の32室が元気に自立する人のフロアだ。お邪魔した日は、ちょうど2週間に1回の映画会の日。マンション以外の人でも、事前に申し込んでおけば一緒に食事ができるシステムで、近所の人たちも交じえて楽しい雑談とともに夕食を終え、午後7時から懐かしい映画「ステラ」が上映された。ちなみに、その日のメニューは、ポテトのミートグラタンにビーンズサラダ、卵スープ、ご飯、そして、デザートのオレンジゼリー。これで1食700円なり。その後は恒例の酒盛りが始まり、話もかなり弾んだようだ。

三者連携で生まれた新しい「老い」の住まい

マンションのオーナーは、同じ敷地内に「中村クリニック」を開く外科医の中村正廣さん(52歳)。それに、市民団体の「福祉マンションをつくる会」(本部事務局・東京)が入居者の要望などを取りまとめ、「生活科学運営」(本社・東京)が事業主体となって施工主である中村さんから1棟まる借りし、運営していくという三者連携で成り立っている。

オーナーであり、主治医、「福祉マンションをつくる会」関西支部長でもある中村正廣医師

これまで長年勤務医を続けてきた中村さんだが、福祉マンション建設のきっかっけとなったのは、祖父の代からの440坪という広い敷地の有効利用と地域医療への思いである。同じ医者としてこの地に開業していた父は、当時、傘の産地として町工場が多かった東成の人々のために、昼夜を問わず地域に根ざした診療を続けながらも、若くして死去。その後姿を見て育った中村さんにとって、キメの細かい治療ができない勤務医という環境に、疑問をもつようになっていた頃である。医療を通して地域福祉に貢献できるものを創りたいという思いがふくらみ、高齢社会に向けた有料老人ホームの構想を練り始めた。
まずは、地元のかかりつけ医に徹したいと、1996年に敷地の一部で開業。同時にホームの具体案を探るなかで出会ったのが、入居希望者が住みたい建物を自分たちの手で建てようと活動する「つくる会」(全国に会員約1500人)であり、すでに全国に13棟の都市型シニアハウスを企画運営をする「生活科学運営」だった。準備から実現までに約6年。三者が手を取り合い、入居者同士、また地域の専門家が助け合って暮らすマンションが2000年夏、 同敷地内に完成した。
「計画が進むうちにわかってきたのが、人と人のつながりの大切さ。住み手が自由に暮らせ、人生の最後も安心して迎えられる満足度の高いものをと願って、行政の規制も援助も受けない道を選びました」

「いずれはハウスに部屋を確保し、母を引き取って、 働きながら一緒に暮らしたい」とハウス長の花木純子さん

また、ハウス長の花木純子さん(46歳)の存在も大きい。それまで東成区で長年看護婦として働き、その後、訪問看護婦として気さくに患者さんと対応する花木さんの仕事ぶりを見てきた中村さんは、医療のパートナーとなる生活科学運営のハウス長に花木さんを推薦。今では入居者はもちろん、入居者の家族のいちばんの相談役となっている。「医療だけではなく、生活すべての面倒をみさせていただくのは私にとって理想の看護。いろいろな方の人生にふれ、勉強させてもらっています」と話す花木さん。介護型入居者の入浴の手伝いから、お化粧などの身の回りの世話、また、パートで入れ替わりが多いスタッフの確保まで、気配りが必要な細かい仕事を笑顔でこなしている。

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