ふらっとNOW

高齢者

一覧ページへ

2000/06/22
これからは、ハートの介護が必要になってくる


■男の老老介護
世界に類を見ないスピードで高齢化が進む日本。介護の必要な高齢者は増える一方で、1997年総務庁調査では、介護のために退職した人は年間で10万1000人。そして、その約1割が男性でした。高齢者問題と切り離せない、これからの介護。「妻の介護を理由」に今春、高槻市長を辞任された江村利雄さんに、男の介護について、3回にわけて語っていただきます。

老老介護
厚生省の1995年国民生活基礎調査によると、介護する人の年齢は60~69歳が28.3%、70歳以上が24.2%と、全体の半数以上が60歳以上の高齢者となった。このように介護の必要な高齢者を、高齢者が介護することを「老老介護」という。



僕たち夫婦は双方の父が町会議員でしてね。終戦直後、僕が22歳の時に見合い結婚しました。昔の政治家は家庭を顧なかったからでしょうか、妻は父親の職業にあまりいい印象を受けなかったようで、僕が市長になるのも反対しました。市長ってあまり誉めてもらえる職業やないですから、元気な時から気を遣っていましたね。反対派の不満の声が、よく妻の耳にも入るんですよ。そうすると「お父さん、あんなん言われて、なんでまだ市長してんの」って。現職中は土日もない、いつ何があるか分からない生活でしたから、辞めてホッとしていると思いますよ。

日本では男性の介護がまだ定着してないせいか、僕たちのケースがずいぶん話題になりました。でも、老夫婦が支え合うのは当然のこと。夫婦ってそんなもんでしょう。介護に男も女もありませんよ。病気になったら元気な方がすればいい。そいうことが取り沙汰されない世の中になりませんとね。

辞任以降、高齢者問題についての講演依頼が増えまして、「介護経験が役立てば」と月に3~4回は参加させてもらっています。やはり中心になるのは介護保険の話です。よく話すのが、制度をつくる側のお役人さんや審議会の先生に、ただの1週間でも老人保健施設などに実習に行ってもらい、介護の勉強をしていただきたいということ。実際に体験すれば、何が不足しているのか、どこが重要なのかわかりますからね。

ホームヘルパーさんでは、いちばん問題になるのが、ヘルパーさんをフォローしようという家族の姿勢です。介護される側には痴呆の人もいて、「あんた何しに来たん、帰り」ってことになる可能性もある。うちでも初めはそうでした。その時、家族が助け舟を出していると、そのうち慣れてきて心も通じるようになりますからね。それに、僕は話し相手になる『セミヘルパー』のような資格もつくるべきだと思うんです。報酬は低くても、簡単な講習で資格が取れるようにすれば、近所の年配の方で2~3人のグループになってできるじゃないですか。妻も会話を増やしたことで、明るくなって痴呆もよくなってきましたから。これからはそうしたハートの介護が必要になってきます。介護保険にいちばん抜けている点じゃないかと思いますよ。心が通う介護じゃないとあきません。
12
関連キーワード:

一覧ページへ