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高齢者

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2015/07/24
アルツハイマーは人生の最後に母が神さまからもらったプレゼント 映画監督 関口祐加さん


困った時こそ、「WHYの法則」「プランB」で考えよう

 認知症になった母は外出を極端に嫌うようになり、2年半家に閉じこもった。介護保険につなげるために地元の脳神経外科医に診せると、外に連れ出して歩けという。「そんなアドバイスはクソの役にも立たない」と関口さん。問診の際、長谷川スケールのテストに傷ついた母は、また閉じこもってしまった。もちろんお風呂にも入らない生活が続いた。

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 そういう時、介護者として何ができるかですよね。私はまず「どうして?」と考えてみました。母はなぜ閉じこもるんだろうと。私はこれを「WHYの法則」と呼んでいるんですが、母はボケても母。歩かせたほうがいいといっても、娘の言うことを素直に聞くわけがない。その辺りのことを医者はなかなか分からない。
 しかし、救いの医師が一人いたんですよ。順天堂大学大学院の新井平伊教授です。「お母さんは認知症だから閉じこもっているんじゃない。苦しんで自分で選択して閉じこもっているんだ」と言ってくださった。その言葉に「ああ母らしい」とすごく納得できた。もう一つは「認知症の人は初期が一番辛いんだ」ということです。母の認知症の初期はまだらボケで、自分に今何が起こっているのかが分かる。母は有能な人だったので、自分ができなくなることに苦しんでいたんです。認知症で一番辛いのは、本人なんですよね。

 理由が分かれば、次はたとえばお風呂に入らない母を「どうしようか」と考えられる。「プランA」がいいけれど、ダメなら「プランB」を考える。だから、母が家から出ないなら、家に人を呼んじゃおうと思ったんです。
 母は娘の言うことを聞かないので、特に衛生的なことはプロの訪問看護師にお願いしたいと思いました。でも、それには医師の介護指示書が必要だった。ところが、地元の医師は「認知症初期の人に訪問看護師は要らない」という考え方でしたから、最初は映画で知り合った名古屋の遠藤英俊先生に書いていただくようお願いしました。
 もう一つの「プランB」は、イケメン介護士の活用です。母は面食いだから、イケメン介護士が迎えに来てくれれば心をときめかせて、デイサービスに行くのではないかと閃いたんです。そこで、ケアマネさんにイケメン介護士がいるデイサービスを探してもらった。作戦は見事成功し、母はデイサービスに通うようになりましたよ。認知症の介護にはプランBどころか、CもDも必要なんですね。

 ドキュメンタリー映画は撮りたくても撮れないことだらけ。そういう時にこそ撮りたいものが見えてくるという考え方をします。それには常に冷静な眼が必要です。そんな時、使うのが「WHYの法則」なんです。どうして撮りたいんだろうと引いて理由を考える。理由が分かれば、どうすれば撮れるかという手立てを考えることができます。
 また、自分に俯瞰スイッチを持てるかどうか。つまり自分を別の視点から見つめる能力です。このスイッチがあれば、介護に没頭して溺れることはそんなにありません。
 最後に、もっとも大切なのはイマジネーションです。イマジネーションが豊かであれば、自分の立場を主張するばかりでなく、すぐに相手の立場に立って考えられる。相手の立場が理解できれば、2〜3手、先を想像することもできる。介護をする人は、イマジネーションを磨くことこそ必要だと思います。映画を観たり、小説を読んだりして感動する心を育まないといけませんね。

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