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2001/02/04
部落の食文化 前編 うちのムラに食べにおいで


「うちのムラに食べにおいで」 部落の食文化
普段のおかずから運動会や遠足のお弁当、誕生日やお正月のごちそうまで、どの家庭にもその家ならではの「味」があり、人それぞれ思い出がある。その記憶は、ただ「食べた」というだけでなく、家族の笑顔や情景といっしょになって心に残っているはずだ。部落にも、部落ならではの「味」とそこに生まれ育った人たちのさまざまな思いがある。ムラ(部落)に生まれ育った30代から50代の女性9人が、食べ物にまつわるエピソードを思い思いに語ってくれた。
すじのこごり
すじのこごり
ムラの味として代表的なものは、「あぶらかす」(注1)「さいぼし」(注2)そしてホルモン(注3)類を使った料理である。
「ムラのなかにお好み焼屋さんがたくさんあったんやけど、どの店にも必ず”かす入り”があったなあ」
「私は”くろかす”言うて、ふつうのあぶらかすより質の悪い、黒っぽいかすをおやつがわりにボリボリ食べてたわ」
「うちでは水菜といえば、あぶらかすと炊いてた。時々、鯨やかぼちゃと炊いたりもしたけど。そうそう、うちのお雑煮は白味噌であぶらかすを入れるねん」「え~っ、そんなん初めて聞いたわ。おいしいん?」
9人とも大阪府下のムラ出身。あぶらかすやホルモンといった素材は、全員にとってなじみ深いものだが、料理法や食べ方は多様だ。初めて聞く料理に、みんなが身を乗りだし、話は一気に盛り上がる。
「うちのムラでは、お好み焼に必ずホルモンを入れるよ。キャベツ、じゃがいも、えんどう豆、玉子にホルモン。おいしいでえ」「私のおばあちゃんは、テールスープが好きやねん。もうだいぶ年いってるけど、今でも楽しそうにつくっては食べてるわ」
「おでんを炊く時には、うどんも入れる。”つけうどん”言うねん。おでんのだしがよく染みて、なかなかイケるよ。私の大好物」
自分のムラや家庭の味自慢が、次々に飛び出す。「葬式や法事の時は、近所の人がその家に集まって煮炊きするんやけど、必ずミノやフクゼンの天ぷらがあったなあ」と一人が言えば、「そうそう、うちも!」と数人が応える。
「白がゆに”はったい粉”(注4)入れて食べてたわ」と誰かが思い出せば、「はったい粉! なつかしいわあ」と、ドッと沸く。
大根を千切りにして一夜漬けにしたものを、団子状に丸めてある「きざみ」。「おイモ、ほっこり」というかけ声とともに売られる「ふかしイモ」。牛の腸や胃袋など、さまざまなホルモンを甘辛く煮込んだ「わんな」。「体にええねんで」と親から教えられた「はったい粉」は、なぜか麦茶とともに売られていたという。
聞いているうちにおなかが空いてくるような「おいしい話」ばかりだが、一方では 切ない裏話もある。
「私は、ホルモンも肉も全然食べられへん」と言うのは、30代の女性。
「叔父がと場に勤めてて、物心つく前からおばあちゃんに連れられて、と場に余り物や捨てられるホルモンをもらいに行っててん。ムラには肉屋が一軒もなかったしね。でもと場はにおいもすごいし、そのへんに牛がいっぱいひっくり返ってる。少し大きくなって、自分の食べてるものと牛が一致した時から、もうホルモンは食べられへんようになった。今でもホルモンはもちろん、普通の肉も食べられへん」
「肉といえば、ホルモンやったなあ。家の前に七輪出して、ミノを焼いて食べたわ。せやけど安いミノやから、噛みきられへん。噛んでる間に味がなくなるから、口から出して醤油つけてはまた食べてたわ。最後にはもう飲み込むねん」(40代)
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