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障害者

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2000/06/22
福祉の仕事カタログ パソコンで障害者も高齢者も社会参加を



シリーズ『福祉の仕事カタログ』

「福祉関係の仕事をしたいなあ」という人が増えてきているようです。でも一口に「福祉関係の仕事」といっても、実にさまざまな職種があります。今、注目されている仕事から、あまり知られていないけど面白い仕事まで、福祉の分野で働きたいと考えているあなたに、いろいろな仕事の現場と先輩からのメッセージを伝えます。

パソコンで障害者も高齢者も社会参加を

パソコンがぎっしりと並ぶ一角。モニターを真剣に見つめる人、講師に質問を投げかける人。汗ばむほどの熱気は、暖房のせいだけではないようだ。今はパソコンセミナーの真っ最中。受講生たちが、講師から出された課題に取り組んでいるところだ。パソコンセミナーなどもう珍しくはないが、ここの雰囲気はちょっと違う。背広のサラリーマンや学生風の女の子ではなく、車椅子の若い男性や中高年世代がパソコンの前に陣取る。そして講師は、足をひらひらと動かしてモニターを指したり、マウスを操作しているのだった。

このセミナーを主催しているのは、社会福祉法人プロップ・ステーション。ここでは障害をもつ人を「障害者」ではなく、「challenged(チャレンジド)」と呼ぶ。「神から挑戦すべきことを与えられた人々」という意味を持つ、新しい米語「the chal lenged」が語源である。「障害をマイナスとしてとらえるのでなく、障害を持つゆえに体験するさまざまな事象を自分自身のため、あるいは社会のためポジティブに生かしていこう」という思いをこめて、プロップ・ステーションが提唱している呼称だ。

'91年の設立以来、プロップ・ステーションではパソコンを使ったチャレンジドの自立と社会参加を目指してきた。なかでも就労の促進は、活動の中心である。日本ではこれまで、「障害をもつ人に必要なのは、保護や支援である」とされてきた。しかし、超高齢化社会を迎える社会で「若くて障害をもたない人」だけが労働を担うには無理がある。チャレンジドであれ、高齢者であれ、育児中の女性であれ、働く意欲をもつ人が仕事を得て、社会参加や納税という形で「支える側」にまわることができる柔軟な社会システムが必要だと、プロップ・ステーションは提言する。

そのための強力な「武器」が、パソコンである。思うように外出できない重度の障害をもつ人や、幼い子どもや介護が必要な高齢者を抱えた人にとって、自宅にいながらにして自由に外部とつながることができるパソコンは、ドラえもんの「どこでもドア」のような存在。'91年に全国の重度障害者を対象に行ったアンケートでも、「コンピューターを使って働きたい」と答えた人が8割を超えたという。その結果、'92 年からパソコンセミナーが始まり、卒業生のなかから企業と組んで大きなプロジェクトに参加する人も出てきた。外出が難しい人のために、通信制のセミナーもある。



足でマウスを操作する講師、岡本敏巳さん(52歳)も、実はセミナー一期生。中学1年生の時にポリオに感染、上肢弛緩性マヒにより両手がまったく動かなくなった。足で日常生活に必要なさまざまな作業をすることを覚え、印刷業を営む作業所で働くなど、もともと自立した生活は送っていたが、パソコンに出会って世界が一変したという。「ええおもちゃ見つけたなーという感じですわ」と笑うが、今は作業所を辞め、プロップ・ステーションの専属スタッフに。週に3回、パソコンセミナーの講師をし、ネットワークのコーディネートや名簿管理なども担当している。セミナーではホームページのつくり方を教えながら、「僕、色彩のセンスないから、僕のマネはしないように」と受講生たちを笑わせる。「難しいことは知らんから」ともいうが、だからこそ教え方は丁寧でわかりやすい。

「ここでは、障害を持つ人が持たない人に教えるのもごく自然な光景です」と常務理事の鈴木重昭さん。数多くの受講生をもつ岡本さんをフォローするのは、通信関連企業の技術者や大学教授。ボランティアとして参加している彼らは、「自分が持っている技術が生きることが嬉しい」と話す。障害をもつ人が働く意欲を刺激され、技術をもつ人はそれが生かされる喜びを実感する場なのだ。

今、障害をもっていなくても、誰もが必ず年を取るし、病気や事故と無縁でいられる保証もない。「支える側」と「支えられる側」が、状況や場面によって入れ替わり、支えることも支えられることも素直に喜び、楽しめる社会。プロップ・ステーションが目指すものは、決してきれいごとではなく、それほど難しいことでもない。ものの見方や意識を少し変えてみるだけで、自分の世界は簡単に変えられるのだということを、プロップ・ステーションの活動は示している。


プロップ・ステーション
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