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障害者

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2001/11/16
施設コンフリクト 最終回


「施設コンフリクト」。多くの人にとっては、聞き慣れない言葉です。けれども実はあちこちの町で起きている、とても身近な問題なのです。もし、あなたの住む町に障害者施設ができることになったら、あなたはそれをどう受け止めますか? 私たちの人権意識を正面から問われるこの問題について、「自分自身のこと」として考えてみてください。

施設コンフリクト
+++「施設コンフリクト」とは+++
身体・知的あるいは精神障害者や高齢者のための社会福祉施設の新設計画が、近隣住民の反対運動によって中断、停滞する「人権摩擦」

シリーズ最終回

シリーズ最終回となる今回は、地域の強硬な反対運動にさらされたふたつの施設の現在を報告したい。地域との関係は、率直にいって今も「良好である」と言い切れる状態ではない。けれども日常のあいさつなどを通じて、ゆっくりながら地域の一員として根づきつつあるのもまた事実である。反対運動の壁を乗り越えて一歩踏み出した授産施設・援護寮・地域生活支援センター「ふれあいの里」館長・水本誠一さんと精神障害者地域生活支援センター「すいすい」の施設長・岡本雅由さんのおふたりに、一連の経過から感じ取られたことや行政のあり方に対する提言、今後の活動に向けての思いなどを伺った。


「地域」対「施設」という構図をなくしていくべき

「ふれあいの里」館長・水本誠一さん

反対一色だった空気を変えたもの

現実問題として、施設がオープンするまで地域には反対の意思がありました。今もあると思います。しかし、意思表示の形が少しずつ変わってきました。
‘94年に大阪市が初めて計画を打ち出した際には、反対の署名が5000人以上も集められたり、約300本の電柱に「絶対反対!」というビラが貼られるという、かなり激しい反対運動が起きました。そのなかで大阪市と地域、そして大阪市から施設の運営を委託された(財)精神障害者社会復帰促進協会(略称:復帰協)の3者で話し合いを重ねてきました。   

ふれあいの里
就労に向けたトレーニングを受けたり、共同生活を通じて自分らしい暮らしを見つけたり、相談や情報提供などのサービスを受けられる「ふれあいの里」

当初、地域のみなさんの姿勢は建設そのものに反対という強硬なものでしたが、工事が始まると、今度は運営にあたっての条件を提示されてきました。たとえば「通所者は主要な駅に集合したうえで通所する」「ひとりでの外出は禁止」というようなものです。しかし、これは本来の目的である「自立生活に向けての支援」からかけ離れたものです。そして何より、問題を起こすことを前提とした条件を受け入れるわけにはいきません。そこで私たち運営側は、「精神障害者への偏見に基づいた話し合いには応じられない。お互いが安心して暮らすための情報交換、情報開示をやっていきましょう」と提案しました。その結果、「ふれあいの里」地域連絡協議会がオープン直前になって発足したのです。メンバーは地域内にある各地区の代表や小・中学校のPTA会長、そして私たちです。

これをきっかけに、反対一色だった空気が少し変わりました。「施設の見学やイベントなど、いっしょにやれるものを考えてください」と言ってくれた人もいます。反対する人に対して、「理解してもらおう」という受け身の姿勢から、「反対意見が偏見に基づいたものなら受け入れられない」という意思を明確にしたうえで積極的に情報を開示する姿勢へと変えたことがよかったのではないかと思います。

差別は受け入れないが、相手の立場も尊重する

一連の経過を振り返ると、いくつか教訓があります。ひとつは、話し合いのかたちです。当初は行政が主体となり、地域のみなさんに「理解を求める」という姿勢での話し合いでした。しかし実際に運営するのは行政ではありませんから、具体的な話ができません。地域からの質問に対してはっきりとした返答ができず、かえって不安を強めてしまったこともありました。責任ある話し合いをするためには、運営主体と地域が早い段階から直接、話し合っていくことが必要だと感じました。

話し合いの進め方も大切ですね。私たちは「ふれあいの里」地域連絡協議会で、「どんな不安がありますか? 本音で話しましょう」と言い続けています。本音を出し合い、問題を整理していくことで、正しい知識を知らないが故の差別や偏見も解消されていくのではないでしょうか。

正直いって、差別的な発言に腹が立ったこともあります。しかしそこではねつけていたら、いつまでたってもコンフリクトは解消しません。地域の代表者として話し合いに臨んでいる相手の立場も考えつつ、施設として言うべきことは言い、いっしょに接点を探していこうという気持ちが必要だと思います。

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