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2003/07/25
どんな「私」も大切な「私」


どんな「私」も大切な「私」 東ちづるさん

パッと花が咲いたような笑顔とハキハキした口調。東ちづるさんといえば「明るい」「元気」という印象が強い。「お嫁さんにしたいタレント」としてもてはやされたりもした。年齢を重ね、絵本の制作やさまざまなボランティア活動など活躍の場を広げた今も、そのイメージはあまり変わらないように見える。しかしここ数年、東さんはイメージと本来の自分のギャップに悩み、「生き直す」ために格闘していた。その経緯を『<私>はなぜカウンセリングを受けたのか 「いい人、やめた!」母と娘の挑戦』という一冊の本にまとめた東さんが語る、「自分らしく生きる」とは?

「マイナスな私」は見せちゃいけない

ごく小さい頃から、私には「明朗活発」とか「元気」というキャッチフレーズがついていましたね。明朗活発や元気で明るいことがいいか悪いかはわからなくても、親が喜んでいるのはわかる。だから「いいことなんだろうな」と、褒められたような錯覚をしていました。けれど思春期を迎えて自我が目覚めてくると共に、「元気で明るいだけじゃない私もいるのに」という違和感を覚えるようになりました。元気で明るい私も嘘じゃないけれど、それだけではない私もいるんです。孤独で自責感に苛まれていて、わけもなく涙が出たり大声で叫びだしたくなったりする私。人を羨んだり嫉妬したりという邪な気持ちをもっている私。だけどそういう部分はマイナスだから、なくさなきゃいけない、人に見せてはいけないと思っていたんですね。たまにお酒を飲みながらのネタ話にはなっても、ほんとうの辛さやしんどさは話せなかったし、話してはいけないと思っていました。

32歳の時、一冊の本に出会って大きな衝撃を受ける。アダルト・チルドレンを自認する著者の生きづらさと自分が感じていたつらさに多くの共通点を見つけたのである。そして「子ども時代から家族に何らかの問題(機能不全)があって、子どもらしくのびのびと過ごすことができず、その結果おとなになって生きづらさを感じている人たちのこと」というアダルト・チルドレン(AC)の言葉の定義を知り、まさに自分のことだと感じた。幼い頃から母親の喜びが自分の喜びであり、母親が悲しい顔をしたりガッカリすると自分を責めた。そろばん、書道、日本舞踊、オルガン、ピアノ、英語教室……。「子どもの可能性を少しでも広げてやりたい」という母の“親心”を敏感に感じ取っていた東さんは、どれも真面目に学び、一通りのことは身につけたが、のめり込むことはなかった。褒められることが最大の目標だったからだ。

「生き直し」を迫る娘と母との葛藤

ACであることを受け入れて、改めて自分を客観的に見つめなおしてみました。すると周囲が思う自分と素の自分のギャップに苦しんでいるのは自分だけじゃない、そしてこうなったのは社会や教育、そして親、もっと言えば母親のせいだと考えるようになったんです。原因がわかれば克服できる。それにACであることは恥ずかしいことじゃない。「自分が悪いのではない」と思うとすごくラクになったし、「ありのままの自分で生き直そう」という気持ちになれました。パチンとスイッチが入ったという感じですね。その後、信頼できるカウンセラーと出会い、本格的に自分を振り返り、過去を整理するという作業を始めました。“生き直し”の始まりです。私らしく生きることで、友達が離れていってもイメージが変わって仕事に影響しても、受け入れようと覚悟しました。

「明るく元気な優等生・ちいちゃん」から、さまざまな感情をもつ一人の女性・東ちづるとして「生き直す」には、母親との“闘い”を避けては通れないと東さんは感じていた。「本来の自分」に戻るためには、娘に「理想の娘」であることを求め続けてきた母にも振り返ってもらわなければならない。それは母自身のためでもある。そう考えた東さんはまず、母に「娘の本心」を伝えることから始めた。

母との関係はそれまでも悪くはなかったので、私と母との話し合いで気持ちは通じるだろうと思っていたんですね。でも甘かった。「私は本当は“いい子”でなんかいたくなかった」という私の言い分は、母にとっては今までの人生を否定されるような辛さがあったんですね。愛情いっぱいに、娘によかれと思ってやってきたことを今さら「辛かった」と言われるわけですから。
私の言い方もよくなかったと思います。母自身のためにもと言いながら、やっぱり恨みの感情もあって責めていました。「もっと私の気持ちに寄り添ってほしかった。点数でがんばったかどうか決めてほしくなかった。私が喜んでいたら一緒に喜んでほしかったし、悔しがっていたら一緒に悔しがってほしかった。でもお母さんは点数や順位ばかりで判断したじゃない」という、子どもの頃には言えなかった気持ちがどんどん蘇ってきて、「過ちを認めてほしい」「謝ってほしい」という思いが抑えられなくなったんですね。

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