ふらっとNOW

子ども

一覧ページへ

2003/11/28
子どものそばにいて喜怒哀楽を共に感じてやってほしい


水谷修さん「解決の道は、まず子どもと向き合うこと。一緒にいればいいんです。共に喜び、哀しめば、言葉なんていらない」と、水谷さん。
私たちは「今の子どもは分からない」とよく言う。現実に大人と子どもの間は断絶しているが、でも、断絶させているのは誰なのだろう。答えは「私たち大人」なのである。
「子どものそばに行って聴けばちゃんと答えてくれますよ。僕は夜の若者の世界をいちばん知っている。なぜなら、その世界で若者と生きているからです。それが“ビールを飲みながら”や“テレビを観ながら”で、分かるわけがない。分からなければ聴けばいい。聴いて答えてもらえる大人になればいいんです」 
誰もが持っている思いやりや優しさを素直に出せばいいのだという。美しい心の動きは、相手の心にも美しいものを見い出させる。
「子どもたちには頭と言葉だけでは通用しません。難しいといわれる思春期でも、親がガミガミ口で言うだけじゃなく心で接すれば、相手の心に何かの響きや余韻が残る。子どもって、与えられた愛が多ければ多いほど非行から遠ざかるし、心の傷も浅いんです」

愛し、守ってやれば子どもは変わる

水谷さんの右手の親指は、今、まったく機能しない。
6年前、暴力団に入った中国人の教え子から組を辞めたいという相談を受け、その子を引き取るための「落とし前」として、金づちでつぶされてしまったのだ。
水谷さんは笑っていう。「この指1本で一人の子どもの命が助かるなら安いもんだ。僕は自分が関わった子どもたちの親なんですから。『子どもが好き』なだけなんですよ。今は、“子どもが好きじゃない教員”や“子どもが好きじゃない親”が多すぎる。好きになって、ウソをつかなきゃいいだけ。それだけで通じあえます」

「僕が抱えている子どもたちは、みんないい目をしています。これまで世の中をにらんで斜にしか見なかった連中が、長い子で3~4年、速い子で1週間くらいでいい目になる」 21年になる教員生活で、子どもを叱ったことも怒鳴ったことも一度もないという水谷さん。子どもたちの話をする時の表情は特にやさしい。
子どもたちは、たとえ親でなくても、本当に好きになり、愛して守ってくれる人間がいれば変わっていけるのだ。「それを目の当たりにできることが、教育者としてのいちばんの快感。21年間の教員生活で子どもたちから教わり続けて、今の僕があるんです」

(2003年7月12日インタビュー)

水谷修さん前編を読む

 

水谷修(みずたに おさむ)

1956年横浜生まれ。上智大学文学部哲学科卒業後、横浜市立上菅田養護学校高等部教諭を経て、横浜市立高校社会科教諭など。現在、横浜市立戸塚高校定時制教諭。2003年1月東京弁護士会第17回人権賞受賞。5月上智大学コムソフィア賞受賞。教師生活のほとんどの時期、生徒指導を担当し、中・高校生の非行・薬物汚染問題に関わっている。特に薬物問題では、若者たちから「夜回り」と呼ばれる深夜の繁華街パトロールを通して、多くの若者たちとふれあい、彼らの非行防止と更正に取り組んでいる。著書に『さらば、哀しみの青春』『さらば哀しみのドラッグ』(高文研)『薬物乱用 今、何を、どう伝えるか』(大修館書店)など多数。

水谷氏は薬物相談で、一人も多くの子や親たちの役に立てばとメールアドレスを公開している。
E-MAIL om@yhb.att.ne.jp
URL http://www.koubunken.co.jp/mizutani/main.html


本の紹介

さらば、哀しみのドラッグ

さらば、哀しみのドラッグ

水谷修 著

高文研 1,100円+消費税

※本の写真をクリックすると、amazonのホームページから本を購入することができます。

関連キーワード:

一覧ページへ