ふらっとNOW

子ども

一覧ページへ

2003/11/28
子どものそばにいて喜怒哀楽を共に感じてやってほしい


若者の薬物汚染と闘い、「夜の世界」で多くの若者とふれあう水谷修さん(47歳)を、若者たちは「闇の教員」と呼ぶ。水谷さんの言葉を借りれば、「夜の世界」は偽りと悪、ウソと不正に満ちた哀しい世界。その世界からひとりでも多くの子が抜け出せるよう、常に子どもの側に立ち続ける。事件を起こす少年・少女を非難するだけで、その背景に目を向けようとしない大人たち、その大人がつくった今の社会こそが変わっていかなければいけないと考えるからだ。

子どものそばにいて喜怒哀楽を共に感じてやってほしい 横浜市立戸塚高校定時制教諭 水谷修さん(後編)

水谷さんは、この12年間で薬物を乱用した2000人を超える少年・少女とともに生きてきた。そのなかで今も脳や身体にさまざまな障害をかかえ、薬物乱用の後遺症に苦しむ子が約1000人。そのうち18人の子を事故や自死で失い、約3割の子を精神病院や刑務所の檻の中に失った。
「みんなかけがえのないいい子ばかりです。自分がもっと早く介入できていたら防げたかもしれない例も。でも、これが薬物の実態です。薬物依存は刑務所に入っただけでは治らない。『薬物依存症』という病気なんです」

治療法はケースバイケースだが、どの場合も回復の道はけわしい。まず見極めなければいけないのは、集団乱用か個人乱用か。集団の場合は興味半分とか、恐い先輩や愛している人のプレッシャーなどから乱用しているケースが多いので、個人乱用ほど難しくはないそうだ。

「集団から切り離して薬物の危険性を身につけさせ、生活や環境を変え、自分なりの将来の夢などが持てるようになると大丈夫です」
個人の場合は、完全に依存形成しているので、医療による治療プログラムと更正グループの「ダルク」などで更正プログラムと関わって継続的に見ていく必要がある。
水谷さんは多くの経験から「どんな薬物でも乱用すれば、その子の精神成長を止め、明日への意欲や希望を奪っていく」と語る。そして、回復には乱用した期間の数倍の時間を要するのが現実である。
「自分で『このままじゃダメなんだ』と気づき、そのためには今かかえているしがらみをすべて捨て、自助グループや病院に入るしかありません。薬物は自分ひとりではとうてい勝てない、それほど巨大な悪魔なんです」

ところが残念なことに、日本で薬物依存症を治療できる医者は5人だけ。専門家も30人もいないそうだ。専門の医療機関や更正施設もほとんどないという。
「僕が知る限りで、医療機関は全国に4カ所のみ。更正施設でも公的なものはなく、民間の「NA(ナルコティック・アノニマス)」「MAC(マック)」「DARC(ダルク)」が資金難のなか、精力的に活動しているのが実態です」

関連キーワード:

一覧ページへ