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2000/09/21
1.ドメスティックバイオレンスとは



「ドメスティックバイオレンス」と呼ばれる家庭内暴力が社会問題となりつつあります。 “夫や恋人からの女性への暴力”のことを指すこの暴力は、 ごく一部の家庭の問題だろうと思われがちですが、 暴力は一見ごく普通の家庭に起きている――というのが実情。 この問題を考えてみませんか。


《ドメスティックバイオレンスとは?》
→ 夫、恋人からの暴力のこと

「ドメスティックバイオレンス」とは直訳すると「家庭内暴力」ですが、“夫や恋人からの女性への暴力”の意味で使われている言葉で、子どもから親などへの暴力と区別するためカタカナ表記され、「DV」と略されています。親密な関係にある男女の間で、主に男性から女性に一方的に繰り返し暴力をふるう場合を指します。
「夫婦ゲンカは犬も食わない」という諺があるように、日本では家庭内のケンカには他人が立ち入らないという不文律があったため、問題視されるのが遅かったのですが、骨折したり青アザが残るほど殴られ続けるケースが少なくないなど、DVは夫婦ゲンカの域をはるかに越えています。夫からの暴力により、年間40人を越える女性が死亡している(※1)など、その被害状況は深刻です。

DVは、比較的目にとまりやすい身体的暴力だけでなくさまざまな形で表れ、多くの場合、次の暴力が重なってふるわれます。

(1)身体的暴力
殴る、蹴る、押す、つねる、物を投げつける、水や熱湯をかける、髪をつかんで振り回す、首をしめる、包丁を突きつける

(2)性的暴力
妻が望まないセックスを強要する、見たくないのにポルノビデオやポルノ雑誌を見せる、避妊に協力しない、妻が望んでいるのに長期間セックスをしない

(3)精神的暴力
「言うことをきけ」「誰のおかげで食べられるんだ」「お前は無能だ」「俺が家にいるときは外出するな」などの言葉を発する、何を言っても無視する、交友関係や電話を監視する

(4)経済的暴力
生活費を渡さない、妻に少額(例:家族4人分1日1000円)を渡し「これでやりくりしろ」と言う、妻を働かせない

    ※1外科医で東京都監察医の荘司輝昭医師が1992年~1996年の司法解剖所見の資料などを元にした調査によると、「配偶者の暴力によって女性が死亡した年間の傷害致死事件100~120件のうち、約40件は虐待を受け続けていた」とみられている。年別では、'92年に21人、'93年に48人、'94年に36人、'95年・'96年に各46人がDVにより死亡している。

《特殊な例でないの?》
「普通の人」が家庭で豹変

DVはごく一部の家庭で起こり、暴力をふるう男性は特殊な人でないかと思われがちですが、決してそうではありません。外ヅラがよく、会社ではバリバリと仕事をこなすなど「まさかあの人が」と思うような男性が家庭内で豹変するケースが多いのです。
東京都の1997年度の調査(※2)によると、パートナーのいる女性の約6割が「何らかの暴力を受けたことがある」と回答。精神的暴力を約半数、性的暴力を約2割が体験し、3人に1人は「叩かれたことがある」というデータが出ています。職業は夫婦とも会社員、公務員、教員、医師、無職など多岐にわたり、学歴や年齢の偏りなく幅広く起きていることが分かりました。DVには、次の3つのサイクルがあるといわれています。

(1)緊張形成期(怒りをため、緊張を高めていく時期)
椅子を蹴る、物を放り投げる、突き飛ばすなど、ちょっとした攻撃を起こします。ひどい暴力にエスカレートしてゆくサインです。

(2)爆発期(怒りが爆発する時期)
2、3発のパンチで始まった暴力が、自分で止められなくなります。数日間殴り続けたり、拷問状態を続けます。

(3)ハネムーン期(反省し愛を語る時期)
女性に謝罪して「もう決して暴力をふるわない」と誓います。陽気でやさしい男性に戻り、「君は大切な人だ」と愛を語ります。

(3)の時期があるため、女性が加害男性から逃げられなくなってしまうのです。
    ※2自治体初のDV調査として実施されたもので、都内の女性センターなどを中心に調査票を配り、2819票(女性1553票、男性1266票)を回収した。

《なぜ、DVが起きるの?》
「男らしさ」に縛られた結果

加害男性は「相手が悪い」「愛情表現だ」などの意識のもとで暴力をふるい、被害女性は「自分にも悪いところがあるから」「暴力的でないときはいい人だから」と我慢するため、悲劇が繰り返されていきます。いったんDVが起きると、その回数や表れ方がどんどんエスカレートしていきます。家庭外で起きる暴力は犯罪なのに対し、DV は「ケンカ」と見なされてきて、法が介入しなかったことも問題です。

「“男らしさ”に縛られ、生きにくさを感じている男性たちの、誤ったコミュニケーション手段。言葉にならない訴えだ」(メンズセンター座長の中村彰さん)

「“男は強く、女はかわいく”といったジェンダー(社会的につくられてきた性差)が根底にある」(日本DV防止・情報センター運営委員の川畑真理子さん)

ジェンダー社会の中で、旧来の「男らしさ」の概念を取り込んでしまった男性が挫折したり、気持ちの整理がつかなかったとき、「自分より“下”」と見なす身近な女性を支配することによって、一時的に自分の弱さを覆い隠そうとする。そのためにDVが起きると考えられています。父親が母親に暴力をふるう家庭で家庭で育った男性が、大人になって妻に暴力をふるうようになるケース、同様に育った女性が暴力的な男性を夫に選ぶケースも多いようです。
《どうしたら解決できるの?》
専門機関に相談を

DVは、個人的なことではなく、性差別という問題をはらんだ社会的な問題です。女性が被害者であるばかりか、加害男性もまた「心を病んでいる」という意味では現代社会の中での被害者といえるでしょう。旧来の「男らしさ・女らしさ」や「男は仕事、女は家庭を守る」といった性役割分業が崩れ、男女共生の世の中にならなければ、根本的な解決にはつながりません。そのためには、法整備が不可欠。男女共同参画基本法に盛り込んだり、性暴力禁止法をつくったりしようという動きも出てきています。また同時に「DVは犯罪だ」という意識が根付く社会にならなければなりません。

しかし、進行中のDVの救済は、急を要しています。

あなたが当事者なら、一人で悩んでいないで、女性問題担当の公的相談窓口や日本DV防止・情報センター(Tel:078-822-0284=月・水・金曜の午前10時~午後2時)、男の悩みホットライン(Tel:06-6945-0252=第1・3月曜の午後7時~9時)に相談を。身近にDVを見聞きしたなら、当事者の気持ちに沿いながら話を聞いてあげると共に、上記機関への相談をすすめてあげたいものです。
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