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ジェンダー

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2000/09/21
2. 眠ってしまったら、殺されるかもしれない。




8年間殴り続けられた

派遣社員として働いていたミキさんは、派遣先の商社で知り合った4歳年上の夫と27歳で結婚した。「母をよく殴っていた父のような男性は嫌だと思っていたのに、気がつけば自分も同じような人を選んでいた」と振り返る。
俺より先に寝てはいけない。先に起きてメシを作れ・・と関白宣言する夫は当初頼もしく思えたが、結婚半年後に暴力が始まった。夜、友達からかかってきた電話で10分ほど喋っていると「いい加減にしろ」とコップを投げてよこしたのだ。その日は「機嫌が悪いのかな」と思った程度だったが、「次の休みの日にどこかへ遊びに行きたい」と言うと「お前の指図は受けん」。新調したテーブルクロスを見せると「俺の稼いだ金で無駄遣いしやがって」。1年も経たないうちに「普通じゃない」と感じるようになった。「ビールが冷えていない」「飯がまずい」と胸ぐらを掴まれ、頬を打たれる、足で蹴り上げられる。鎖骨にヒビが入ったこともあった。
しかし、そんな日々が続いたかと思うと、照れくさそうにアクセサリーを買って来てくれたり「ミキちゃんの料理は本当においしい」とほめてくれる日々もある。
「本当は優しい人なんだ。私がいけなかったんだと反省しました」
多くの場合、DVは怒りをためていく第1の時期、暴力が爆発する第2の時期、一転して優しくなる第3の時期を繰り返しながら暴力がエスカレートしていく。第3の時期があるためやり直せると思う女性が多いのだが、ミキさんの場合もそうだった。しかし、2カ月もしないうちにまた、些細なことに腹を立てては殴る蹴るの夫に豹変した。
産後、実家に長男を初めて連れて行くとき、「車に乗せて行って」と頼むと、「俺は運転手じゃない」と腹部を蹴られた。育児にてんてこ舞いをしていても、家事を全く手伝わないばかりか、暴力も止まらない夫だったが、「子どもにとってはお父さんだから」と耐え続けた。しかし、「巨人が負けた」「帰りの電車が混んでいた」とミキさんに無関係なことまで「お前が悪い」と八つ当たりして殴ってよこす夫に「もう限界」と思うに至った。
「あなたの夫のような性格の人は治らない」
相談した友人に、そう言われて決心がついた。家を出るためにお金をためようと思っていた矢先に、冒頭の事件が起きたのだった。

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