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2005/07/22
家庭科は「衣食住」を通して考えることのできる暮らしの哲学


家庭科は「衣食住」を通して考えることのできる暮らしの哲学 大阪府立成城高校教諭 南野忠晴さん

歴史的にもっともジェンダー・バイアスのかかった教科とされてきた家庭科。30年ほど前には実質的に女子だけの教科だったのだが、1993年から中学で、高校では94年から「男女共修」となり、教科書の内容も大きく変わった。今、実際の教室ではどういった授業が展開されているのだろう。男女共修に先立つ92年より「家庭科教員をめざす男の会」を結成し、英語教諭からまだまだ数少ない家庭科教諭に転身した大阪府立成城高校教諭の南野忠晴さん(46歳)に、家庭科の現状を伺った。



戦後、男女とも選択科目として男女共修の時代があったが、その後、女子のみが必修となった家庭科。時代の変化のなかで1974年に「男女平等の基盤は教育にあり」と市川房枝氏らが代表世話人となって「家庭科の男女共修をすすめる会」が発足した。こうした運動とともに、75年に国際女性年世界会議が開かれ、79年に国連が女性差別撤廃条約を採択したことを受けて、日本でも同条約批准に向けて男女共修への取り組みが始まったのである。そして、85年の批准に続き、家庭科の男女共修が89年の新学習指導要領に盛り込まれ、93年からの実施へとつながっていった。

 

女子大で学んだ家庭科

僕が家庭科に興味をもち始めたのは、高校の英語教師となって6年目の29歳の頃。英語は受験科目で、ただ試験に受かるためだけの授業に違和感があったんです。それ以前にもっと生活面でやるべきことがいっぱいあるような気持ちもあって。そんな頃、結婚して子どもが生まれ、子育てに関わるなかで、男は育児も家事も何も勉強していないこと、親からも教えられていないことに気づいて、個人的にちゃんと勉強してみたいと思ったのがきっかけです。その頃は、自分が家庭科の教員になるなんて考えてもいませんでした。

まず、家庭科を勉強するにあたって、いちばん困ったのが学ぶ場所。当時、通信過程で高校の家庭科の教員免許が取れるのは日本女子大しかなく、男性である僕が受け入れてもらうのは大変でした。大学に問い合わせると、受講するには教授会で審査するための理由書が必要で、それまでも何人かの男性が聴講生になっているが、全員、所属する学校長の推薦を受けているとのこと。早速、理由書と推薦書を用意しましたが、いくら女子大とはいえ、通信なのに男というだけで規制があって、もう少し柔軟であっていいと思いました。そんなことがあったせいか、調理や被服などの実技のスクーリング科目を受けるために女子大の門をくぐった時には少し緊張しましたね。まあ、その後、家庭科が男女共修になるというので男性の受講希望者が急に増えて、4~5年後には男女共にOKになったようです。


英語教員から希少の男性家庭科教員へ

南野さんの写真 87~88年の2年間、英語教員を続けながら家庭科の通信教育を受けたわけですが、そのなかで人生の転機となるような目新しい発見はありませんでした。でも、その頃、「人が生きる力」を教えていくのが家庭科じゃないかと、早い段階から気づいた人たちが男女共修の運動を全国に広げていて、そういう人たちから受けた影響は大きかった。彼らが教科の中身を男女共修に耐えうるものに変えていったんですが、その一方で、女子だけが必須だった時代から家庭科を良妻賢母をつくるしつけ教育と捉え、男子が入ってくることを嫌がる人たちもいて、そのせめぎ合いは今も続いているんです。
そうした環境のなかで、僕らも運動に関わっていきたいと同じ女子大を聴講した2人が中心になり約20人の仲間と、92年に「※家庭科教員をめざす男の会」を結成しました。その翌々年に高校も男女共修になるということで、僕のような男性の家庭科教員が誕生したわけです。ただ、教員免許は取ったものの、英語から家庭科に変わりたいと教育委員会に頼んでも断られ、仕方なしに教員採用試験を受け直して、94年から大阪府立少路高校で家庭科を教えることになりました。
男性教員のメリットとしては、今の家庭では男性の家事への参加率がまだまだ低いのが現状ですから、「家事や育児は、男性も分担しよう」と女性の先生が言うより、実践してる男の教員が言うほうが説得力があるという点でしょうか。

 

府内の男性家庭科教員はわずか3人

家庭科教師になって今年で11年目、いまだに最初は珍しがられます。昨年転勤になった学校は工業高校(2005年4月より総合学科の多部制単位制高校と変わり、学校名も成城工業高校から成城高校と改称)で、元々男の先生が多いんですが、着任のあいさつでは「工業で男の先生ばっかりだから家庭科ぐらい女の先生が来てくれよと思ってたかもしれないけど、ごめんな」っていう感じでした。共学校から男子がほとんどの高校に移って、生徒の反応はどうかなと案じてたんですけど、以前と同じ。生徒たちは小・中学と男女共修できてるので違和感はないようです。
昨年、介護職に就いている教え子と会う機会がありましてね。今も高校の時の家庭科のノートを持っていて、時々見てると話してくれました。また、一昨年には初めて家庭科の先生になりたいと教育実習にきた男の子がいました。やはり、そういうのは嬉しいですね。とはいえ、大阪府の男性家庭科教員は現在でもわずか3人。教える側も男女半々になった時に本当の男女共修が完成するんじゃないかと思っているんですが、なかなか難しいようです。

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