「司法書士さんや弁護士さんの業務をハード面とすと、私たちがサポートするのは精神的なソフト面。これまで人にはなかなか話せない、また聞いてもらえなかった部分です。相談者にとって敷居が高い専門家でも、私たちが仲介することで、専門家の元へスムーズに行けるきっかけになればいいと思っています」 弘中さん自身、多重債務の無料相談に行った時、女性の弁護士から「破産するなら1人30万円で弁護士を紹介します」と言われたことがあった。「お金がなくて訪れている人には『法律扶助』という制度がありますよ」と教えてもらえていたら随分楽になれたのに」と振り返る。追い詰められていたら、「お金が必要なら、もう死ぬしかない」と思ってしまうのが人間の性だ。そういう意味でも、人の気持ちを理解できる、顔の見える専門家を紹介したいと語っている。 「死にたいという言葉の裏には生きたいという気持ちが隠れてる。相談してもどうにもならないとあきらめないで電話をしてほしいです」 現在、会ではNPO法人化が押し進められている。大阪精神科診療所協会の精神科医も加入し、さらに強固な連携ができると期待される。多重債務者は追い詰められ、うつ的になってメンタルケアが必要なケースが多いからだ。来春には認可が下りる予定である。 電話相談の他、月1~2件の講演活動を続ける弘中さん。多重債務に関わることはもちろん、遺族としての自分の歩み方も大きなテーマ。「自分の母親が思ってる以上に私は母の死を一生背負って生きて行ってること、自分を責め続けてる思いを話し、大切な人にこんな思いをさせないでほしいと訴えています」。
クリスチャンの弘中さんが尊敬するマザーテレサ。来日した時の「日本という国は豊かだけど、寂しい人がいっぱいいます」という言葉が印象的だったという。彼女の「あなたの隣に寂しい人はいませんか?」「どれだけ大きなことをしたかではなく、どれだけ心をこめたかです」との2つの言葉をいつも頭に置いて活動しているそうだ。 そして、今あるのは、母をいつも自分の中に感じる幸せ。イヤなことも、いいことも全て母に報告する。 「最近、私も幸せを感じてええんや、と思ってる。私が幸せで笑ってたら、お母ちゃんも喜ぶと思うから。相談者から解決後、『ありがとうございました』と電話をもらうたびに、母の顔を思い出し、『お母ちゃん、これで堪忍やで』といつも心で語りかけるんです」
text:上村悦子
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