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2004/09/10
イラク支援 本当に求められているもの


自衛隊の派遣や人質事件を通じて、イラクに対する支援のあり方がさまざまに議論されてきました。しかし、肝心の「イラクの人々がどんな支援を求めているか」ということは、十分に検証されているのでしょうか。
イラクから医師や白血病の子どもを招き、研修や治療を受けてもらうという形で支援をしている「セイブ・イラクチルドレン名古屋」の小野万里子さんに、イラクの現実と求められている支援について伺いました。

イラク支援で本当に求められているもの セイブイラクチルドレンの活動から

 

発泡スチロールに描かれた地図

・・・イラクへの支援活動を始められたきっかけは?

’03年2月、初めてイラクを訪ねました。その時は、正直言って継続的に支援に関わるなんてまったく考えてなかったんですよ。ただ、アフガニスタンの時に「これは世界全体が間違っている」と思いながら何も行動できなかったことに、ずっと悔いが残っていたんですね。
そして今度は大量破壊兵器の保有を理由に、アメリカやイギリスなどがイラクを攻撃すると言い出し、結局それを止めることはできませんでした。国際社会は「主権不可侵」という大原則を歴史のなかで痛いほど学んだはずなのに、これでは100年の逆戻りだと非常に憤りを覚えました。そんな時、インターネットで「イラクの人たちの顔と生活と大地を知ろう」とイラク訪問を呼びかけるサイトに出会ったんです。「この目でイラクという国を見て、イラクの人たちと交流して、いつか私たちの国はこの戦争に参入してしまうかもしれないけれど、多くの市民の考えは違うのだということをイラクの人たちに伝えたい」という思いで参加したのが、イラクとの「出会い」でした。だから、本当はイラクに行って、帰ってくれば「活動」は終わりのはずだったんです。ところが現地で見聞きした事実があまりにも重く、「帰ってくれば終わり」にはできなくなってしまったんです。

爆撃されたバグダッド市内の写真
バグダッド市内。爆撃されたビルが生々しい姿のまま放置されている

・ ・・イラクで見聞きしたこととは?

たとえば、小学校を訪問した時のことです。ほんの100メートルほど先の橋が数日前に壊されたと聞かされました。「誰がやるの? 飛行機が来るの?」と訊くと、「いや、どこからかわからないけどミサイルが飛んできて壊すんだ」と言うんですね。ところが学校では、休み時間にサッカーをする子どもたちがいて、アラビア語の綴りを間違ったといって頭を掻いてる子がいて、先生に叱られてうなだれている子がいる。本当に、日本の子どもたちと同じですよ。だけどイラクの子どもたちは、いつミサイルが飛んでくるかわからない。一瞬のうちに何もかもが壊れ、死んでしまっても、当たり前のように「処理」されるんです。その現実を自分の目で見た時、「今、アメリカをはじめとする先進国がやろうとしていることは本当に罪深いことなんだ」と痛感しました。サダム・フセインがどうこうという以前に、なぜこの子たちが殺されなければならないのかと。

・・・そんな状況での子どもたちへの教育は、いろいろな意味で大変ですね。

バグダッド市内で、物売りをする子ども。
バグダッド市内で、物売りをする子ども。「イラクの子どもたちは親をよく助けて働きます」と小野さん

とにかくあらゆる機材が足りません。フセイン時代から続く経済制裁のため、鉛筆なんかも制限されていて、ちびた鉛筆を大事に大事に使っています。教科書も何代にもわたって使ってきたのがわかるし、地図は発砲スチロールに先生がマジックで描いたものでした。また、学校の先生たちは、高学年になるにつれて学校へ来られなくなる子どもが増えることを憂いてました。特に女の子が家のなかでの労働力として必要になるうえ、「教育を受けさせてもしょうがない」という考えが根付きつつあるのが非常につらいと、女性の校長先生がおっしゃっていました。
イラクはもともと富国強兵政策のなかで教育を大事にしてきたという経緯があり、すべての子どもたちに教育を受けさせてきました。ところが今は教育どころではない状況です。卒業時には入学時に比べて約3割減っていると先生たちは嘆いていました。

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