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多民族共生

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2006/03/10
未来に続く、ほんとうに意味のある国際協力を求めて


医師として、写真家として海外で医療救援活動をつづける山本敏晴(40歳)さんは、私たち65億人が住む地球を、宇宙空間を飛ぶ巨大なジャンボジェット機にたとえ「宇宙船地球号」と名づけている。「ファーストクラスに座るのは先進国の欧米人、日本人ら約20億人。残りの45億人は、エコノミークラスどころか、満足な水も食糧もなく、教育も受けられず、貨物室にぎゅうぎゅ詰めに押し込まれている。50年後には100億人を突破するであろう人口、不足するエネルギー燃料を奪い合って起きるだろう戦争・・・」。年間約50回はこなす講演で、多くの若者たちに語りかける。「私たちは墜落寸前の宇宙船に乗っていることを自覚し、もっと世界に目を向けなければ」と。

未来に続く、ほんとうの意味のある国際協力を求めて NPO法人「宇宙船地球号」代表:山本敏晴さん

山本敏晴さんには、小学6年の時以来、心に引っかかり続けた光景があった。父に連れられて行ったアフリカ旅行で目の当たりにした他国の現実だ。
「ケニア・ソマリアの難民キャンプで見たすさまじい数のハエ。子どもたちは、ハエがびっしりたかり真っ黒になったスイカを平気で食べていた。また、南アフリカ共和国でのアパルトヘイト(人種差別政策)。空港には赤い絨毯が敷かれ立派な自動ドアのついた白人専用の搭乗口があるのに、黄色人種の自分も含め黒人用はあまりにもお粗末でした」
強い衝撃を受けながら、その後もアジア、アフリカなど発展途上国を中心に40カ国以上を歩き、中学2年の時、買ってもらった一眼レフで各地の写真を撮り続けた。
手塚治虫の漫画にも夢中になった。一番影響を受けたのが、人口の増加により核兵器で人類が絶滅する話がくり返し出てくる『火の鳥』。さまざまな関連書物を読みあさり、人口問題を究極に考え抜いた結果、どうやら人類の滅亡は本当らしいと分かった段階で、さらに強く国際協力に関心を持つようになっていく。その一方で、国際協力とはしょせん自己満足にすぎないという気持ちも強かった。
「アフリカでは年間300万人が餓えや病気で死んでいく。医師として現地へ行っても助けられるのは何百人にすぎないのではないか。任期を終え『ああ、よくやった』と自己満足して帰国すれば、元の状態に戻ってしまう・・」
「その国、独自の文化を無視して近代文明を押しつけ、西洋医学を使って仮に人々が豊かになり、寿命が伸びたとしても、それがその国の人たちの本当の幸せにつながるのだろうか・・」

「自己満足ではなく、意味のある国際協力」を探して

高校卒業後、開業医だった父の跡を継ぐべくして医学の道へ。大学院では遺伝子の研究に没頭。医学博士号を修得後、30歳で小さな病院の院長も経験した。その間も国際協力について考え続け、30歳を過ぎた頃、やっと自分なりの理論に行き着いたという。
子供たちの写真「現地の言葉を覚え、文化を尊重して行うなら、押しつけの国際協力にはならないはず。徹底的な家族計画の指導により人口増加を防ぎ、人類滅亡の日を遅らせる。そして、医療スタッフを教育・育成すれば、私がいなくなった後も医療は継続できるのではないか」
どこかに意味のある国際協力の道はあるはずと、35歳である国際援助団体に医師として参加。平均寿命が34歳と世界で一番いのちの短い国・シエラレオネ(西アフリカ)に赴任した。ダイヤモンド鉱山があるために内戦を起こされ、反乱軍によりわずか5歳の子どもたちが戦場に立たされた過去をもつ国で、山本さんは巨大なゴキブリや連日の下痢に悩まされながら、現地の言葉や風習を覚え、休みなく診療を続け、信頼できる医療スタッフを育て、病院を再建した。
翌年の2002年には、日本のとあるNGOの医師として内戦が続くアフガニスタンへ。各民族の指導者や政府と交渉し、病院開設に向けて奔走。コーディネイタ-として物資を集め、数百人のスタッフを確保し、システムを作成し、小児科や手術のできる産婦人科をオープンさせた。団体のトップと信頼関係を築き、一般の人々に家族計画指導や公衆衛生教育も行った。その間にも時間を生み出しては写真を撮り、現状を本にまとめ、日本国内で写真展も開いてきた。

「宇宙船地球号」を未来に続けるために

並大抵の労力や努力では継続できそうもない海外での過酷な日々。山本さんはこうした体験を重ねながらも、内戦が続く国で「未来に通じる、本当に意味のある国際協力」を実現するためには、さらに違った方法が必要だと気づく。
「病院をつくり、スタッフを育成しても、戦争が起これば、すべて水泡に帰してしまう。未来に続くシステムを実現するには戦争をなくすことなども必要だ」
結局、未来に残るシステムを作るためには、

○戦争をなくすこと、すなわち「政治の安定」
○建設した病院等を維持するための「経済援助」
○7割以上の人が字が読めない中での「義務教育の普及」
○「医療と公衆衛生の改善」
○行われた援助が未来まで持続するための「環境問題」

といった5つの項目が必要だという結論にたどり着いたのである。

寺院と鳩の写真 そして帰国後、自らの団体である非営利非政府組織「世界共通の教科書を作る会」を創設。2年前「宇宙船地球号」と名前を変えた。
「この5つの項目を実践するには、私一人では到底無理。じゃあどうすればいいか。世界中の人たちが、少しずつでも世界に目を向け、世界のために力を尽くしてくれたら、未来に向けて持続可能な社会になるであろうという発想が『地球船宇宙号』。現在、そのための具体的な3つの活動を続けています」

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