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2005/04/22
うつ病になったから見えてきた差別や偏見


現在、大阪精神医療人権センターの事務局長として活動する(退院促進支援事業も含め)山本深雪さんは、辛い過去をこう語る。
「私は今、やっと自分を好きになれた気がして、自分ではうつになって良かったと思っています。20歳代は本当にしんどかったし、すごい緊張感があった。自分らしく生きるとはどういうことかという疑問がずっとあって、その頃、見えた光景はすべてグレイ。灰色のものがズシンと上に乗っかかってて、まるで自由にならないという思いばかり。今は太陽の光がきちんと感じられ、とにかく今日を生きたいと思うのです」
結局、ひとつの生物体にすぎない人間。食事をし、排泄をするという基本を大事しなければいけないのに、当時は食べることを楽しむ感覚なんてなかったという。
「両肩に乗る重石や責任はパンツのゴムと同じで、引っ張りすぎると切れてしまう。高速道路を走るようなスピードではなく、自分にとって無理のない速さで歩きたいと思っています」

大阪府から始まった退院促進支援事業は、いまや全国的な施策となって政令都市を含め28都道府県にも広がった。行政サービスから取り残されていた精神に障害のある人が、ホームヘルパーやショート・ステイなどを受けられるようにもなった。また、入院歴や通院中の精神に障害のある人自身がサポーターとなるピアヘルパーも徐々に増えつつある。
かつて偏見や差別で孤立せざるを得なかった人たちが、選択肢のある場を提供され、話し相手や相談相手を得られることで、「自殺や、状態の悪化を防ぐ大きな力になっている」と語る山本さん。遠い昔、山本さんが自分では自殺行為という意識がないままに、たまたま踏切りの上で、身体も心もガチガチになってしまった時のようなことが、二度とあってはならないから──。

(text:上村悦子)

NPO大阪精神医療人権センター
530-0047大阪市北区西天満5-9-5
tel/06-6313-0056
http://www.psy-jinken-osaka.org

退院促進支援事業に関する問い合わせ先
・各地域の保健所/精神保健福祉担当者
・財)精神障害者社会復帰促進協会/ 06-6944-3592

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