特集

戦後60年と人権

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2005/11/25
ぼくは「戦争、絶対反対」です。 野中広務さん


1日に100人の人が自殺する国

―――フリーターやニートの存在は今、大きな社会問題として関心を集めています。「甘えている」「怠け者」と個人の問題とする見方や、「戦後教育が悪かった」という指摘があります。

野中さん写真

戦後教育の問題ではありません。日本の金融資本の崩壊から外資が入ってきて、中小企業を始めとする関連企業をつぶした。大企業は人件費を抑えるためにリストラや早期退職を進め、派遣やパート社員を使うようになりました。今、景気はよくなったと言われていますが、数字上のまやかしです。倒産、リストラ、給与とボーナスのカットで、多くの国民の心は豊かにはなっていません。そういうなかで、「生き残った会社の収支」だけがよくなり、法人税が伸びたということです。

フリーターが増えたのは企業が正規雇用をしなくなったことが大きな原因です。フリーターは失業者数にカウントされませんが、いつ仕事がなくなるかわからないという点では失業予備軍であり、潜在的な失業者数は大変な数になります。

そのうえ、ここ数年、年間3万5千人前後の自殺者が出ている。1日に100人もの人が自ら命を絶っているわけです。心の病も増えているでしょう。「改革」が進んでいるような印象をもっている人が多いかもしれませんが、この4年で国家の屋台骨がつぶされたような気がします。

―――戦後教育の検証を含め、学校教育の見直し論議も盛んです。「平和」という視点で教育をとらえる時、何が必要だと思われますか?

従軍慰安婦問題が教科書から消えたといって喜んでいる人がいます。全員が強制連行ではないかもしれない。さまざまな事情を抱えていたでしょう。けれど軍の 施設のなかに慰安所があったのは事実なんです。戸口にムシロ一枚を吊ってあるだけの部屋が並んでいたそうです。それぞれの部屋の前には、50~60人の男 性が褌ひとつでズラーッと列をなしていた。死んだようになっている女性に、明日の命も知れない兵隊が狂ったように向かっていったと、ぼくらは戦地から帰っ てきた連中から自慢話のように聞かされました。決して懺悔の姿勢ではなかった。

これは金を払ったかどうかという次元の話ではありません。女性の、人間としての尊厳をいかに傷つけたか。これを真摯に受け止めなければいけない。新幹線の なかで「俺は(従軍慰安婦に)金を払ったんだよ」と大声をはりあげている国会議員がいました。そんなことをいろいろ見聞きして、同じ日本人として、男とし て、嫌になったことがあります。

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