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2011/01/19
知的障害者が被害者の刑事裁判


記者の目:知的障害者が被害者の刑事裁判=川上珠実

◇障害理解せぬ判決繰り返すな

強制わいせつの被害を訴えた宮崎県在住の知的障害者の女性(30)について、知的障害を理由に検察官の起訴を無効と判断した判決が昨年末、福岡高裁宮崎支部で破棄された。「被害者は、供述調書と告訴状の違いを説明できない」。そんな理由で被害者の訴えを門前払いした1審のような判決がなぜ出てしまったのか。私は関係者の話を聞いて回り、障害者に対する司法の理解不足と、「司法過疎地域」の問題を強く感じた。

◇告訴能力否定し1審は起訴無効

この裁判は、飯干広幸被告(61)が09年2月、被害女性を誘い出して車に乗せ、わいせつな行為をしたとして起訴された。宮崎地裁延岡支部は同年9月、検察官の起訴を無効とする判決を出した。

3カ月前、法廷に被害女性を呼んだ尋問で、裁判官は、事件後、警察官などに事情を聴かれて作られた「供述調書」と「告訴状」の意味の違いを女性に尋ねた。口調はやさしくとも、障害への配慮は感じられない抽象的な質問だ。女性は説明できず、結局、判決は「告訴で生じる利害得失も理解できない」などとして、女性の「告訴能力」(被害を訴える力)を否定した。

告訴状と供述調書の違いを即座に説明できる人がどれだけいるだろう。そんな理由で知的障害者を排除するのが正しい司法のあり方なのか。そんな思いから、事件の周辺取材を始めた。

事件当時、女性は宮崎市から車で3時間以上かかる山間地に住んでいた。人見知りで親しくない人には話をしないが、記憶力はよく、事件の1週間後に被害現場まで警察官を案内した--。通っていた福祉作業所の職員はそんな話をしてくれた。周囲の誰もが女性の訴えを疑っていないことが印象的だった。

女性の父親は、被害に遭いながら「訴える力もない」と判定された無念さを語った。「裁判所には従わなくてはならないが……」と、言葉を詰まらせた 暗い表情が忘れられない。自宅は、最も近い弁護士事務所まで車で数時間かかる司法過疎地域にある。法律的な相談をできる専門家は皆無だ。被害を届け出れば周囲に知れると恐れたが、家族は「黙っていればまた被害に遭う」と悩み抜いた末、告訴を決めた。

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毎日新聞

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