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2013/05/02
【西日本新聞】貧困連鎖 平等どこに 自治体で援助に差


 

【西日本新聞】貧困連鎖 平等どこに 自治体で援助に差 生活苦、強盗犯した青年「幸せ築きたい」
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生活苦、強盗犯した青年「幸せ築きたい」

1週間ほとんど水しか飲んでいなかった。金欲しさにタクシーに乗り、運転手にかみそりを突き付けた。怖くなって何も奪わずに逃げたが、運賃650円を払わず運転手の手に軽傷を負わせた。

逮捕された。容疑は強盗致傷。薄暗い留置場で祥吾(22)=仮名=は思った。「貧乏でなかったら、こんなところに…」

生後間もなく両親が離婚。祥吾は九州の漁師町で港湾や土木現場で働く父親に育てられた。小学生のときから家事は全て祥吾の仕事。できていないと父親から殴られた。

泣き声を聞いた近所の人の通報で警察が何度も来た。顔にあざをつくるたび、担任教師や児童相談所の職員も来たが、父親が「しつけだ」と言うとみんな黙った。

中学時代は昼食代もなく、私立高に進むとバイト三つをこなして月約3万円の授業料や生活費を稼いだ。授業中はほとんど寝ていた。「将来の夢なんて考えられなかった」

仕事は定まらず、20歳のときに暴力団の資金源だったホストクラブに転がり込んだ。給料をもらえず寮から逃げ出した。かみそりを握ったのは、その2カ月後だった。

憲法14条はを保障する。現実には「人生のスタートラインから差がある。格差が固定化されている」と、子どもの貧困に詳しい長崎大准教授、小西祐馬(34)=児童福祉=は言う。

貧しい家庭に生まれた子は、貧困を理由とするいじめや不登校で学習の「機会の平等」を奪われることが少なくない。安定した職に就けず、貧困が連鎖。厚生労働省によると、生活保護受給者のうち親も受給者だったのは約25%に上る。

貧困家庭を支える仕組みには市町村による就学援助制度もあるが、制度の実態を調べている福岡県の小学校事務職員、高津圭一(48)は「自治体によって取り組みに落差がある」と指摘する。

高津は2008年、全国の31自治体について就学援助の対象となる年収基準額を調査した。4人家族の場合、259万円から431万円まで開きがあった。保護者向けのプリントや広報紙で積極的に申請を呼び掛ける自治体もあれば、全く告知していない自治体も。「貧困家庭の多い自治体の大半は税収が低く財政難。申請を抑えたいのだろう」と高津はみる。

祥吾は援助制度を知らなかった。住む場所によって救われたり、救われなかったり。セーフティーネットに憲法の理念は十分生かされていない。

「これから頑張りなさいよ」。判決言い渡し後、裁判長に諭され、祥吾は頭を下げた。懲役を覚悟したが、執行猶予が付いた。初公判の日、検察官が冒頭陳述で祥吾の生い立ちに触れたとき、多くの裁判員が泣いていたのを思い出した。

「助けてくれる人がいたから、スタートに立てた。今から何とかはい上がって、幸せな家庭を築きたい。平等ってほんとにあるんだと思いたい」

祥吾はNPO法人が運営する自立支援施設に入り、ヘルパー2級の資格を取った。アパートを借り、介護施設で働き始めたばかりだ。

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西日本新聞

 

 

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