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2013/05/08
【読売新聞】職場でのパワハラ被害の告発、どう対応すればよい?


 

【読売新聞】職場でのパワハラ被害の告発、どう対応すればよい?
http://www.yomiuri.co.jp/otona/life/law/20130501-OYT8T00963.htm

「会社にとって私は取り換えのきく部品、もしくは虫けらでしょう。でも、一寸の虫にも五分の魂です。この恨みが忘れられません。アイツだけは絶対に許せないのです」

その手紙には、パワーハラスメント(パワハラ)を受けたという40代の女性社員の生々しい告発の声と、告発に至るまでの経緯が事細かに記されていました。彼女の上司は「アイツ」呼ばわりです。

告発者の激しい怒りがにじみ出る手紙を読んで、人事部長の私は、頭を抱えました。この問題の背景にあるのは、2009年のリーマンショック後に進めてきた社内のリストラです。即席飲料を製造販売している当社では、健康飲料ブームにのり、十数年前から青汁の売り上げが急激に伸び始めました。社員を増やし、組織を急拡大したのですが、同業他社とのシェア争いで劣勢になったところでリーマンショックの直撃を受けたのでした。

彼女は、長年、本社の購買運輸部包装資材課に所属し、主に伝票の入力を担当していました。ミスのない完璧な仕事ぶりだったのですが、リストラに伴う業務の見直しで、北関東の出張所にやむなく異動してもらうことにし、配転の打診を行いました。

ところが、上司から打診を受けた時に、シングルマザーの彼女は、「幼稚園と小学校低学年の子ども2人の面倒を実家の母親にみてもらっているため、配転には応じられない」と主張し、異動を断ったのでした。

告発によると、それから約1年間、上司から一切新しい仕事を与えられず、同僚と仕事上の話をするのを禁止され、毎朝挨拶しても無視されたそうです。また、「女には無理」「役立たず」などと大声でどなられ、休憩時間に休憩をしていると、「やることが遅いし、手順が悪いのだから休憩なんかしないで、さっさと仕事をしろ」と言われたりしたというのです。彼女は、「これらはパワーハラスメントに該当し、会社には、私が被った精神的な損害などへの賠償責任があります」と主張しています。

パワーハラスメントについて最近よく聞きます。私は人事部長でありながら、恥ずかしいことに、基本的なことを知りません。パワハラとは、具体的にどのようなもので、会社が責任を負う場合があるのか――といったことを教えてください。また、今回のケースで、会社に責任が生じるということであれば、単なる社員間のトラブルということで済ますことはできず、今後、会社としてパワーハラスメントを予防していく必要があります。具体的にどのような対応が求められるのかについても、教えていただけないでしょうか。(最近の事例を参考に創作したフィクションです)

近ごろ、注目を集めるパワハラ…ネットで炎上も

ご相談の事案のように、「自分にだけ仕事が与えられない」「同僚との会話を禁止される」「毎朝、挨拶しても無視される」「他の社員がいる前で、大声でどなられる」など、職場における「いじめ」や「嫌がらせ」といった職場のパワーハラスメント、いわゆるパワハラの問題が、近ごろ、社会的な注目を集めています。

以前はそれほど一般的に使われる言葉ではなかったですが、今や様々な場面で頻繁に使われるようになり、最近も、あるアニメにおける偽の声優オーディションを巡り、ネット上でパワハラ批判が起こり炎上しました(興味がある方は、「パワハラ」「炎上」のキーワードで検索すれば関連記事が上位を占めていますのでご参照下さい)。

都道府県労働局に寄せられる「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は、平成14年度には約6600件であったものが、平成22年度には約3万9400件と5倍以上に増えています。また、民事上の個別労働紛争相談件数の中で「いじめ・嫌がらせ」に関するものは平成14年度には第4位でしたが、平成22年度には第2位となっています。さらに、東証一部上場企業を対象に行われた「パワーハラスメントの実態に関する調査研究」(平成17年中央労働災害防止協会)では、43%の企業が、パワハラあるいはこれに類似した問題が発生したことがあると回答し、82%の企業が、パワハラ対策は経営上の重要な課題であると回答しています。

このように、社会的な問題として顕在化してきたこともあり、厚生労働省の審議官なども参加する、職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議では、平成24年3月15日、「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」を公表しました。また、この提言に先立つ平成24年1月には、上記円卓会議のワーキング・グループが、「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」を公表するなど、国もパワハラ対策に積極的に乗り出しています。

パワハラとは何か

パワハラは、法令上明確に定義されているものではなく、必ずしも一義的に捉えられません。例えば、前述の円卓会議ワーキング・グループ報告では、職場のパワハラは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」と定義されています。

また、法務省関連の資料では、「職場内での地位や権限を利用したいじめ」を指し、「職権などの優位にある権限を背景に、本来の業務範囲を超え、継続的に、相手の人格と尊厳を侵害する言動を行い、就労環境を悪化させる、あるいは雇用不安を与えること」とされています。

ちなみに、この連載の「営業課長が新入社員にセクハラ どうすればいい?」でもご説明しましたように、セクハラが、「セクシュアルハラスメント」(sexual harassment)という英語の略語であるのに対し、「パワーハラスメント(パワハラ)」は和製英語です。欧米では、職場のいじめとして「mobbing」「bullying」「moral harassment」といった語が用いられています。辞書によると「mob」の意味は「群れをなして襲う、寄り集まって喊声かんせいを浴びせる」とあり、また「bully」の意味は「いじめる、脅す、威張り散らす」とあり、この英語の直訳の内容が、パワハラのイメージをつかみやすいかもしれません。

パワハラの具体例

では、パワハラの具体例としてはどのようなものがあるでしょうか。前述の報告書では、職場のパワハラの典型的な行為類型として次のようなものを挙げています。

(1)暴行・傷害(身体的な攻撃)

(2)脅迫・名誉毀損きそん・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)

(3)隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)

(4)業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)

(5)業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)

(6)私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

なお、報告書では、上記の類型のうち、(1)については、業務の遂行に関係するものであっても、「業務の適正な範囲」に含まれるとすることはできないとしています。いずれも、場合によっては刑事事件に発展するような行為であり、当然のことと思います。

それに対して、(2)(3)については、業務の遂行に必要な行為であることは通常想定できないことから、原則として「業務の適正な範囲」を超えるものと考えられるとされています。報告書も例外の存在を認めているわけです。さらに、微妙なのが(4)から(6)までです。報告書も、(4)から(6)については、業務上の適正な指導との線引きが必ずしも容易でない場合がある旨を指摘しています。こうした行為については、何が「業務の適正な範囲を超えるか」については、業種や企業文化の影響を受け、また、具体的な判断については、行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうかによっても左右される部分もあると考えられるからです。

職場においては、会社業務を円滑に進めるために、管理職に一定の権限が与えられており、場合によっては、部下に対し指導や叱責が行わることがあります。例えば、取引先との約束時間を間違えて遅刻してきた時、同行した上司がつい「何やってるんだ!」とどなってしまったとしても、それだけでパワハラと評価することは難しいでしょう。

この上司の行動は、「業務の適正な範囲」に含まれる部下への指導であると考え得るからです。しかし、この言葉に加えて、「お前の将来はないものと思え」「だから、お前とは仕事したくないんだ」「親の顔が見てみたい」「ウワサ通りの役立たずだな」「仕事しなくていいから、帰って寝てろ」などと言ったり、さらにそれが日常的に繰り返されるとパワハラとなってきます。

つまり、部下への業務指導の一環としての「叱責」は許容されても、その叱責に加えて「嫌がらせ(ハラスメント)」の要素が加わってくると、パワハラに転化するわけであり、この点が難しいところです。

なお、ここでは上司と部下の例を挙げていますが、パワハラは、上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間などの様々な「優位性」を背景に行われるものも含まれるとしています。世間では、パワハラというと、上司から部下に行われるものと思われがちですが、必ずしもそういうわけではありません。

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読売新聞

 

 

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