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2013/08/01
【毎日新聞】記者の目:過労死防止基本法


 

【毎日新聞】記者の目:過労死防止基本法
http://mainichi.jp/opinion/news/20130729k0000e070196000c.html

◇悲しみ根絶へ制定急げ

過重労働問題に取り組む弁護士らのグループ「過労死110番全国ネットワーク」が活動を開始して25年。今や「KAROSHI」は世界に知られる言葉になった。だが、2012年度に脳・心疾患を発症して労働災害と認定されたのは338人(死亡123人)と高止まりしたままだ。精神疾患の労災認定は475人(未遂を含む自殺は93人)で過去最多。過労死は一向に減る気配がない。状況を変えようと、過労死防止基本法の制定に向けて活動しているのは、他でもない遺族たちだ。過労死を食い止めるために、遺族の悲痛な声に耳を傾けたい。

◇亡き父恋い慕う女の子の姿に涙

忘れられない光景がある。10年前、東海地方の過労死遺族に話を聞いた時のことだ。自宅を訪ねると、当時3歳だった遺児の女の子が玄関にポツンと座っていた。白いワンピースにレースの付いた靴下、赤いエナメルの靴を履いて着飾っていた。背筋を伸ばし、そろえた膝の上に、小さなバッグを乗せている。「お出かけ?」と聞くと、こくりとうなずいた。取材の約束があるのにおかしいなと思いながら、母親と向き合った。

父親は月120時間を超える残業を1年近く続け、34歳の若さで突然死した。労災を申請しようとしていたが、営業職だったため残業時間の立証が難しかった。約2時間の取材を終えて帰ろうとすると、女の子は、まだ玄関に座っていた。その理由を母親が涙声で教えてくれた。

「土曜日はいつもおしゃれして玄関に座っているんです。自分が可愛く良い子でいれば、お父さんが迎えに来て、お出かけに連れて行ってくれると思っているんです。最後は疲れてその場で寝ちゃう。せめて夢の中で、お父さんに会えればいいんですけどね」

母親の言葉通り眠くなってきたのか、小さな背中が前後に揺れた。それでも必死にピンと背筋を伸ばそうとする。まだ言葉で嘆くことも悲しむことも、できなかったのだろう。小さな体全体で父を恋い慕う姿に涙が止まらなかった。家族が引き裂かれる酷薄さを思わずにはいられない。

◇働いているのは血の通った人間

企業社会は「働いているのは人間だ」ということに無頓着だ。「24時間働け」という言葉が平気で語られる。こなせるはずのない量の仕事を命じて「このくらいできないなら会社をやめろ」と追い詰める。遺族の話を聞くと、過労死が減らない背景が見えてくる。

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毎日新聞

 

 

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