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2013/10/17
【朝日新聞】同化求めるのも差別 無意識の態度、ヘイトスピーチ助長


 

【朝日新聞】同化求めるのも差別 無意識の態度、ヘイトスピーチ助長
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http://digital.asahi.com/articles/TKY201310150314.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201310150314

■金明秀(関西学院大教授)

今月7日、在日特権を許さない市民の会(在特会)の会員らによる京都・朝鮮学校前での街宣活動に対し、民事訴訟の判決が下りた。同会員らの言動を人種差別と認め、高額の損害賠償と同校周辺での街宣禁止を命じたものだ。原告勝訴の判決を受けて「行き過ぎた差別表現は現行法制によっても規制できることを示した」といった楽観論も見られたが、実際には速報が出た直後から判決に反発するヘイトスピーチがインターネット上に大量にあふれっぱなしである。日本における排外主義の根はすでに深い。

在特会らの言動に見られるように、人種や民族によって人間に優劣を設けたり、異なる人種や民族を相いれない存在として遠ざけたりする態度をレイシズムというが、これまでの研究から、日本におけるレイシズムには少なくとも2種類のあらわれ方があることがわかっている。排外主義的レイシズムと同化主義的レイシズムである。

排外主義的レイシズムとは、日本の伝統や血統とは異なる集団を劣等視したり、互いの差異を誇張したりすることで排除しようとする態度で、多くの人にとっての一般的なレイシズムのイメージはこれにあたるだろう。一方、同化主義的レイシズムとは、異文化集団に日本社会の「普通」で「正常」な文化への同化を強制する態度を指す。逆に言えば、「異常」で「奇妙」な文化を捨てさって、異質性が“見えない”状態にまで同化しないかぎりは対等な社会の構成員とは認めないという態度である。

欧米の多くの国で、「同化」はマイノリティーのアイデンティティーを脅かすということから、差別の同義語として理解されている。しかし、日本ではむしろ好ましいことだと考えられている。例えば、「転校生が土地の言葉を話すようになってくれたとき、本当の仲間になれた気がした」といったエピソードは美談として語られる。だが、生来の言語を捨てなければ「本当の仲間」に入れてもらえない転校生の疎外感が語られることはあまりない。「同化」という現象は、日本においてはある種のロマンチシズムを喚起する美しい物語であって、レイシズムとつながるような疎外の現実はいつも不思議と語られずに終わってしまう。一見見えにくい日本社会での排外主義はこうした物語化によって支えられているのである。

その意味で、ヘイトスピーチの原因は日韓の政治対立であって、そうした異常事態が収まりさえすれば「普通」に戻るといわんばかりの主張は問題である。まず、排外主義的レイシズムの原因を日本社会の外部に押しやっていることが無責任だ。そして、レイシストも民族的マイノリティーもみんな「普通」に同化すれば問題は解消するという楽観的な態度こそが、何年もの間ヘイトスピーチを放置することにつながったことへの反省がない。

日本のレイシズムの問題を理解し、乗りこえるには、「普通」に戻るのではなく、一人ひとりが「同化」を美化する物語を克服しなければならない。極端でわかりやすい排外主義的レイシズムだけをひとごとのように問題化し、穏健でわかりにくい同化主義的レイシズムを「普通」のこととして温存する構造を打破しないかぎり、ヘイトスピーチの被害を食い止めることはできない。

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