NHK大阪放送局「ぐるっと関西おひるまえ」など、ブラウン管でおなじみのタレント亀山房代さんのもう一つの顔は、10代の性教育についての発言者。中学や高校から請われた講演で、「亀ちゃんはな、セックスしたらアカンと言いに来たんと違うねん。どんどんしなさい、と言いに来たんとも違う」と口火を切り、性をざっくばらんに語り、命の大切さに熱弁をふるっている。
37歳。既婚。子ども3歳という亀山さんのプロフィールは、一見「10代の性教育」と接点がなさそうだが、講演活動を始めてすでに13年になる。きっかけは、ラジオ番組のパーソナリティーをしていた時にかかってきたリスナーの女子高校生からの一本の電話だった。
「亀ちゃん、妊娠判定器におしっこをかけたら、陽性が出て、赤いマークつくねん」
学校の学期末試験の真っ最中という、クリスマス前。私立の進学校に通っているという女子高校生から、家庭教師の大学生とつきあっている、妊娠してしまったらしいと淡々と打ち明けられた。突然の電話に、亀山さんはうろたえた。
「私自身が“おくて”だったこともあり、セーラー服の似合うごく普通の高校生、それも進学校に通う真面目な子が妊娠したということに、驚きました。親にも誰にも相談できない彼女が、『亀ちゃんやったら、相談にのってくれると思って』と電話してきたのです」
「放っておけない性格」という亀山さんは、その後、彼女と何度も連絡を取り合って、いつから生理がないのか、体調はどうかなど聞いた。彼氏にも会い、2人が決していい加減な気持ちでつきあっていたわけでなかったことも分かった。が、妊娠は予期せぬことだった。
話し合った末に、学校に行きながら子どもを生むことはできないという結論を出し、病院に行く日を決めた。
1月のある日、亀山さんの持っていた大人っぽい服を着て、薄化粧をして産婦人科に行く彼女に付き添った。亀山さんは、彼女の中絶手術を受けている間、産婦人科の待合室で待ったが、そこには、大きなお腹をした妊婦さんたちがいた。やがて生まれてくる赤ちゃんに思いを寄せる幸せそうな妊婦と、辛い目をしている彼女と望まれないのにできて生まれることなく葬り去れる命が、あまりにも対照的だった。
「やるせなかった……」
彼女のような経験をする子が、ひとりでも減るように----。
いても立ってもいられなくなり、「ティーンズのための正しい性教育」というイベントを開いた。それが各方面の目に止まって、各地の中学や高校から「性教育の話をしに来てください」と講演依頼がくるようになったのだという。
近ごろでは、小学校の時からいわゆる性教育は行われ、男女の体の差異について、子どもたちは授業で学ぶ機会はある。しかし、10代で妊娠する子がいるというのは、どういうことだろう。
「早く、私なんかが性教育の講演に呼ばれなくなる日が来てほしいんですが」
神戸市西区の中学での、亀山さんの講演を聞いた。3年生の男女がずらりと並んだ体育館に現れた亀山さんは、「今日は、みんなに、セックスしたらあかんと言いに来たのと違うねん。どんどんしなさい、と言いに来たのとも違うねん」と口火を切った。
自分は、中学に入った時、133センチしかなかったこと。バレー部に入ると、ブラジャーをつける決まりがあったが、「ペチャパイ用のブラジャーは売ってない」。布を縫い合わせ、自分で作ったが、先生に「お前はつけなくていい」と言われたこと。ことごとく「おくて」なことに悩み、待ちに待った生理が始まったのは高校3年の時だったこと……そんなことから、「体はひとりずつ違うんや」という話が始まった。
「みんな、悩まないでいいことで悩んでいるやろ」
おっぱいが大きいとか小さいとか、男の子はちんちんが右に曲がっているとか左に曲がっているとか、そんなことで悩むな。太ってるとか痩せてるとか、毛が生えてきている、生えてきていないとかでも悩むな。ひとりずつ顔や声が違うのと同じように、体もその成長過程も違うと話は続く。
ふと、来ているセーターのそで口をひっぱり、手がセーターの中に隠して、
「普通、ちんちんは、こんな形やんか」
と示し、でも勃起したらこんなふうになる、と、そで口からグーに握った手をのぞかせる。中には顔をそむける生徒もいたが、亀山さんは気にしない。
「オナニーするやろ。して、いいんや。けど、大事なことは清潔な手でしないとアカンということ。ばい菌が入ったら病気になる。お風呂に入ったときも、ひだのところをちゃんと洗わないとアカン。もしも、射精した時に血がにじむようなことがあったら、すぐに泌尿器科に行ってください」
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