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シリーズ「ジェンダーフリー・パーソン」第2回−大工

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 かつての“男の職域”に飛び込む女性が増えている中、大工の世界に飛び込んだ女性がいます。大阪府高槻市で「ミエちゃん工房」を主宰する小多美恵子さん(48)。バリアフリー・リフォーム業として独立してまもなく1年。7つ道具を積んだ車を走らせ、東奔西走の毎日を送っておられます。「青春を取り戻そうと好きな仕事を選んだ」と話す小多さんにご登場いただきます。
介護経験と女の視点を生かしたバリアフリー・リフォームが得意です
「女は無理」と言われて発奮

 私は、今27歳と24歳の息子たちが小学生の時に離婚。生命保険会社に勤めて息子たちを育てたんですが、彼らも大きくなりやれやれと思った矢先に、寝たきりの父の面倒を見ることになりました。その時の経験がきっかけで、大工になりたいと思ったのです。
 というのは、父と一緒に住むバリアフリーの家を建てたのですが、出来上がっていざ介護をしてみると、わずか2〜3ミリの段差の敷居に車椅子がつかえたり、手すりの位置が高すぎて役に立たなかったりと不都合がいっぱいでした。父が亡くなった後、そんな経験を生かしたいという思いと、将来息子たちの重荷にならないために仕事をしようという思い、それに、教育費がかかる期間が終わったから、収入面をそう重視しなくてもいい、ならば好きなことを仕事にして青春を取り戻したい。そんな思いが重なり、44歳の時に大工をしている長男に「弟子入り」をしました。
「男の俺でもきつい仕事やのに、おかん、無理やで」
 という長男の言葉に発奮。角材の束を担いで肩の皮が剥けたり、重たいくぎ袋を腰に付けて脚立に立つと身震いがしたり・・・。我が息子に「アホか、何してんねん」と怒鳴られ「こんちくしょう」と何度思ったことか。「怒鳴られながら体で覚える」という職人の世界の厳しさは相当でしたが、何度もの失敗を経て天井のボードをきっちり貼れるようになったときのうれしさは何物にも変えがたかったですね。



「女性だから分かってくれる」の声も届く

 バリアフリー・リフォームを専門にしようと思ったのは、ドーンセンター(大阪府立女性総合センター)の女性起業家セミナーを受けた時に、福祉関係に強い同期生と出会ったから。彼女に協力してもらい、また開業資金および運転資金350万円を国民金融公庫から借り入れして、昨年3月にバリアフリー・リフォームを専門にした「ミエちゃん工房」を旗揚げしました。「大手業者には頼みにくい手すり1本から踏み台、すのこ作りまで、どんな小さな工事でも引き受けます」というのが“売り”。最初の2カ月ほどは、業者さんや在宅介護支援センターへの挨拶回りと介護の実態を知るための勉強会出席の日々でしたが、そのうち支援センターから仕事を依頼されるようになりました。
 手すりを付けてほしいという依頼が入ると、まず支援センターの担当者と一緒に依頼者のお宅を訪問し、疾患の状態を聞きながら、担当者が手すりを取り付ける位置を決める。それに基づいて、私が工事費用の見積もりを出し、認可が出ると工事に入るというのが仕事の手順ですが、
「女の人やから、こちらの注文をよく分かってもらえる」
 と言われることもある。工事現場の廃材をもらってきて補強板に利用し、見積もりコストを下げたり、ミリ単位の誤差を納得できるまで調整したり。大工さんの応援を頼む時は、段差1ミリの敷居が車椅子利用者にとってどれほどのハードルになるのかをとことん話します。設計の人にも、口をすっぱくして伝えます。
「ありがとう、ちょうどいい具合」
「これで安心して暮らせるわ」
 依頼者のそんな喜びの声を聞くと、お役に立てたのだと本当にうれしくなります。言い換えれば、男世界だった大工業界に、これまで女の視点が不足していたといえるのかもしれません。危険を伴う仕事だという覚悟、重いものを持てる体力があることなどが絶対条件ですが、これからは女性の同業者が増えてほしいと思います。


小多美恵子(おだみえこ)
大工。1951年大阪市生まれ。高校卒業後、タイピストを経て生命保険会社に勤務。1992年父親の介護のために退職。父の死後、大工職人の息子に弟子入りして修業し、1999年3月、バリアフリー・リフォームを専門にした「ミエちゃん工房」を設立した。

連絡先:0726-96-1636


 シリーズ第1回はこちら



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