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在日コリアンについて正しい理解を〜「容疑者の本名報道」「強制連行」議論の意味。大阪市立大学教授 朴一さん

 戦後61年目。すなわち朝鮮韓国が日本の植民地支配から解放されて61年目を迎えるが、日本人は、60万人以上といわれる在日コリアンの人権について誤った理解をしていないだろうか。その一例である、「本名」「通称名」の報道問題をキーに、「強制連行」のとらえ方など在日コリアンのおかれた立場などを、大阪市立大学大学院教授の朴一(パク・イル)さんに聞いた。


マイクのイラスト 昨年、TBSの「サンデー・ジャポン」に出演された時に、「在日コリアンが犯罪を犯した時に、通称名ではなく本名で報道されるのは問題だ」といった発言をされ、物議を醸しました。詳しく教えてください。

 容疑者となった時、普段から本名を使って生活をしている在日コリアンは、本名で報道されていいのですが、朝日新聞を除く新聞各紙やテレビが、普段は通称名(日本名)を使って生活している在日コリアンをわざわざ民族名(本名)で報じているのは問題ではないのかという問題提起です。

 ご承知のように、現在、在日コリアンの80%〜85%は日本の名前で日常生活を送っていて、パスポート以外に本名をほとんど使わない人も多いわけです。例えば、以前、複数の婦女暴行容疑で逮捕された京都府八幡市の在日の牧師もそうでした。事件後、私も取材に行ったのですが、彼は通称名で生活していたので、信者を含めて周囲の人たちもみな、彼を在日だとは知らずに、もちろん本名も知らなかったのですが、朝日を除く各報道機関は本名で報じました。

 本名で報道されても、周囲が、自分たちの知っている人とその人が同一人物だと判断できる材料は、小さく掲載される写真しかありません。もし写真が載らなければ、まったく判断がつかず、誤った情報という可能性も出てくる。通名報道をという理由の一つは、周囲に認知されていた犯行当時の使用名が正しい情報の決め手だという単純なものです。

 もう一つの理由は、その犯罪と出自、国籍に因果関係があるのか、ということ。この事件は、彼が在日であるということとは関係がないのに、本名報道によって犯人が在日コリアンだという出自がクローズアップされることになります。そこには、犯罪を出自に結びつけようとする意図が差別的に働いているのではないか、ということです。

マイクのイラスト確かに、通称名で通している人が本名で報道されても、周囲は誰のことだか分かりません。それに、わざわざ本名で報道されると、新聞やテレビを見聞きした人たちは「あの人は在日だったのか」という印象を強く受けることになります。

 京都の牧師の事件を載せた週刊誌の中吊り広告に、「在日韓国人、日本人処女○人をレイプ」と、身の毛もよだつものもありました。私が被害者に取材したところ、日本人だけではなく在日の女性も被害者にいたし、しかも「処女」かどうかなんて分からない。ところが、その週刊誌の広告は、「在日の容疑者」と「日本人処女の被害者」をわざわざ対比させたわけです。この言葉は、日本人の「嫌韓意識」を高めるための装置として、作為的に使われたと考えられます。

 
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