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家族にも向けられる差別は今も

 全国ハンセン病療養所入所者協議会(全療協)も今回の映画制作に全面協力した。事務局長の神 美知宏(こう・みちひろ)さん(73歳)は、「ぼくらの気持ちを代弁してくれた映画」と話す。映画は、ハンセン病に対する差別をさまざまな角度から描いているが、患者の家族も厳しい差別にさらされることと、そのために家族が患者の存在をひた隠しにする悲劇も描かれている。神さん自身も17歳で療養所に入所すると同時に、「家族に迷惑が及ばないように」と偽名で生きることを選ばざるを得なかった。
絶望の日々を送ったが、心ある職員と交流するなかで生きていこうとする力を取り戻す。20代半ばにして自治会役員となり、待遇の改善を求める運動に取り組む。しかし、人間らしく生きることを求めて闘う自分が偽名を使っていることに抵抗を感じ続けていた。
神さん「だから、らい予防法が廃止になるのを期に本名を名乗ろうと決意しました」。当時の菅直人厚生大臣が全生園へ謝罪に訪れるのを待ちかまえ、マスコミがカメラを構える前で「今日から本名の神 美知宏になる」と宣言した。
 しかし家族は「なんで今さら」と、神さんが本名を名乗ることに反対だった。なかでも老いた母親は、「お願いだから、孫たちが一人前になるまでは偽名で通してほしい」と強く言い続けた。神さんは言う。「身内にハンセン病者がいることをひた隠しにしてきた家族にとっては、一番やってはいけないことだったんです。だけどぼくは50年間、耐えてきた。迷惑はかかるかもしれないけど、もう我慢ならなかった」。
そして本名で生きると宣言した姿が大々的に報じられた朝、母親が心臓マヒで急死する。神さんの載った新聞を目にすることなく――。「直前までぴんぴんしてたのに。だから最初に聞いた時、自殺したのかと思いました」。病死だと知ってもショックは大きかった。しかも葬儀に出席することは許されなかった。「近所の人たちはぼくのことを忘れてくれているんだから、わざわざ思い出させるようなことはするなということです。父親が死んだ時も同じでした。結局、3年も経ってから墓参りをしました」。神さんの母親の懸念は取り越し苦労などではない。実際に、神さんが療養所にいることを理由に、何度も破談になった身内がいた。家族の苦労も重々わかっている。

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