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キャラバンを伝えるライフリンクのニュース 各地で改めて実感できたのが、いろんな地域に自殺問題を何とかしなきゃと思っていた方が予想以上にいらっしゃったこと。これまではきっかけがなかっただけなんだと。アンケートでも、自殺って他人事じゃなく、暮らしに深く関わる問題なんだと気づいたという方が多かったです。
 全国キャラバンはテレビなどメディアと連動させた啓発で、広くマスコミを通して自殺対策が進んでいるのを報道してもらい、シンポジウムや研究会で具体的にどういうことが行われてるのかを伝えていく、それが一体となって初めて関係者以外の人も巻き込めると思ったんです。そうすると一般の人もたくさん来られ、話し合っていくと、みなさん真剣に話を聞いてくださる。多い所では、シンポジウムで800人ぐらいを集めました。
 全国キャラバンをきっかけに、沖縄、島根、長崎、佐賀、東京西多摩などで遺族の会が発足し、京都、埼玉、秋田などもともとあった所は行政と連携するようになるなど、大きな成果がありました。

 今年2008年、ライフリンクを中心とした「自殺実態解析プロジェクトチーム」は、自殺の実態を初めて詳細にまとめた「自殺実態白書2008」を発表。7月4日、政府に提出した。プロジェクトチームは、ライフリンクの清水代表をはじめ、東大大学院・澤田康幸准教授、弁護士、精神科医、自死遺族らで、07年4月に発足。これまで一切公表されることのなかった警察庁のデータを基に自殺の実態や地域特性などを細かく分析、解明した。

予想以上の協力や応援に世の中捨てたもんじゃないなという思い

自殺実態白書 「自殺実態白書」の大きな柱は2つ。「自殺の地域特性」と「自殺の危機経路」の解明です。
「地域特性」の解明については、警察署単位で集計されたデータを活用して、澤田准教授が中心となってまとめました。市区町村単位で自殺の実態をはじめて明らかにすることができたのですから、その意義は大きいと思います。自殺対策の大きな転換期となったといっても過言ではありません。
 地域の特性が分からないと、その地域でどういう人たちがどういう理由で亡くなっているのかが分からず、実務的な対策も立案できません。これまでは実態が分からず、とにかくやれることをやろうと、全国どこに行っても金太郎飴みたいな啓発活動しかやってこれなかった。効率が悪く、効果も出ない方法です。それだけでは追い込まれた人を実務的に支援していくのは無理です。今回、解明されたことで、逆にどういう人たちに対してどういう支援をすればいいかが自ずと見えてきた。そういう当たり前のプロセスに自殺対策を乗せることができたと言えます。

 もうひとつの「危機経路」が出せたことも大きかったです。我々が昨年からやってきた「自殺実態1000人調査」をもとに、遺族の方々と協力しながら自殺で亡くなった305人の実態解明を行いました。その中で、「自殺の背景には平均4つの要因あること」「自殺の進行には3つの段階があること」「自殺した人の7割以上は事前に医療機関などに相談していたこと」などが初めて明らかになりました。
 これまで自殺の理由というと、うつ病とか多重債務、いじめなど、ひとつの要因と自殺の関係しか語られてこなかった。それが、危機経路が分かったことで、自殺の背景には平均すると4つの要因があること、しかも、それが連鎖しながら、その連鎖にはある種のパターンがあるということまで見えてきたんです。そうして連鎖の仕方が分かれば対策の取り方も、未然に防ぐためにはどういう連携をすればいいのかということまで分かってくる。連鎖を封じるために先回りして対策を打っていけることになります。

縦割り行政の弊害で置き去りにされてきた自殺対策

清水康之さん

 日本の縦割りの行政の弊害だと思うのですが、これまではそれぞれの行政区分で個別に対策を立てていたんです。専門家にしても、弁護士の場合は多重債務の問題だけ、精神科医だとうつ病だけといった具合にです。ところが、自殺の問題は人の生き死にの問題であって、トータルな存在としての人をどうするかということ。危機経路を解明したことで、人がある問題を抱え、その問題をより深刻化させたり、そこから連鎖していくさらなる問題を抱え込んで追い込まれていったりする、そのプロセスの問題なんだということを、ちゃんとあぶり出すことができて非常に大きな意味があったと思います。それによって対策も連携が必要だというのを、それなりの説得力をもって主張することができるようになりました。

 聞き取り調査を行った調査員は、私も含めたスタッフと遺族の方々です。地域で遺族支援をしている方たちにも同行してもらったんですが、我々は遺族の方たちに「協力してください」とはお願いしませんでした。対策を作っていくためには実態の解明が必要なので、「一緒に参加しませんか」と呼びかけたんです。遺族の方は体験を語るというカタチで調査に参加し、我々は伺った話を対策につなげるというカタチで参加する、対等な関係で調査を作り上げていく仲間だと捉えています。ですから我々からすれば、遺族の方が、あの調査に参加してよかったと思えるような結果を出して初めて責任を果たすことになると思っています。今回、幸い白書をまとめて政府に提出し、メディアにも取り上げられ、今、いろんな形で対策に活かされて始めているので、約束は果たせていると思います。遺族の方も調査に参加してよかったと思ってくださってる方が多いのではないでしょうか。

「自殺実態白書」で目を引くのは、04〜06年の自殺者9万7032人の分類だ。全国の警察署管内別、市区町村別に細かく集計。原因や動機、職業別にも分類され、ハイリスク地も掲載されている。全国の各地域で、どのような年代、性別、職業の人が、どのような原因や動機で自殺しているかが見えてくる。この地域特性と危機経路、両者の解明により、これまで漠然としか分からなかった日本の自殺の実態が、初めて立体的に見えてきたという。結果、具体的な自殺対策に確実につながろうとしている。

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