ふらっと 人権情報ネットワーク
  メールマガジン  サイトマップ  お問い合せ
情報サイト内検索

キーワードで検索できます。
10代の人権情報ネットワーク BeFLATはコチラ
 ふらっとについて  ふらっとNOW  ふらっと相談室  ふらっと教室  特集  ふらっとへの手紙  リンク集
戦後60年と人権
子ども虐待
ネットと人権
子ども虐待ー子どもの権利、子どもの人権ー

文字縮小

暴力の被害者も、加害者もつくらない。

ワークショップの風景
ワークショップの風景

 

 大人ワークショップでは、子どもへの暴力の現状やいじめの特性、その治療の難しさなどが説明されるが、保護者が特に再認識させられるのが、「子どもが自分で身を守る」という発想だ。子どもは何もできないからと従来の「〜してはいけない」では、子どもに無力感や恐怖心を与えるだけで、大人が「〜できるんだ」と子どもの力を認識し、引き出さなければ、子どもは自分の力を発揮できないという内容である。

 また、大人ワークショップは常に子どもワークショップの前に開かれるが、その意義は大きい。せっかく子どもがCAPの知識を身につけて大人に相談しても、大人が聞く耳を持たなければ意味がないからだ。というのも、いじめや性暴力を受けた子が、自分の気持ちを話そうとしたとき「あなたが悪いんじゃない。あなたを信じるよ」と受容して聴いてあげることは最も大切なことであり、その子を援助できる重要なスキルとなるのである。
 桝井さんはいう。「虐待を受けてきた子どもが、連鎖的に子どもを虐待する大人になるかどうかの分岐点になるのが、自分の気持ちをなるべく早く人に語ることができ、受け止めてもらえたかどうか。それはカウンセラーや専門家でなくていい。身近な大人でいいんです。共感して聴いてもらえることが、その後の回復の決定的な差になります」

 昔から気持ちを外に出さないことが美徳とされてきた日本では、大人でさえ人に気持ちを伝えるのは苦手で、しかも、あまり聴き上手ではないそうだ。親は自分の興味のあることしか聴かず、子どもが本当に聴いてほしいことは言えないまま残ってしまうことが多いという。ワークショップでは、子どもの気持ちを共感して聴く練習もする。

子どもは、選択肢が広ければ広いほど行動できる。

 当初からCAP普及のため先頭に立って推進してきたNPO法人「女性と子どものエンパワメント関西」代表の田上時子さんは、「日本の子どもにとって、CAPは唯一の暴力防止プログラム。子どもにも権利があるという視点が欠けている日本で、CAPは子どもたちが自分に力があることを知る初めてのメッセージかもしれない」と話す。

 カナダで10年間、少数民族番組のプロデューサーを務めていた田上さんが帰国したのは88年。子どもの虐待と関わるきっかけとなったのが、翌年に起きた東京・埼玉連続幼女殺人事件だった。この事件で子どもの虐待に対する日本社会のあまりの認識のなさに絶望し、子どもを守る防止策が緊急に必要だと痛感。子どもたちに自分の力で自分の心と体を守る方法を教える「わたしのからだよ!」を90年に翻訳した。

田上時子さん
田上時子さん

 

 田上さんは「事件が起きるのは、子どもの周りに大人がいないとき。子どもにも『私にも何かできる』という自信と、何ができるのかという情報を伝えることが防止策になる」と主張したが、教育の専門家からは日本にはそぐわないと反論された。わずか10数年前のことだが、「無力な子どもに何かできると教えることは、わがままを教えるだけ。子どもに自己主張させてはいけない」という意見が主流だった。その頃、アメリカの民間団体にCAPという機関があり、日本人メンバーがいることを知って、自分が考える防止策が間違っていないかどうかを確かめるために渡米。それがCAPと、また日本人メンバーであり、初めて日本にCAPを紹介した森田ゆりさんとの出会いとなった。

 以来、子どもの命を守る問題に取り組み、子どもの安全を守るための暴力のない社会づくりを目指し、そのためには加害者を作らない社会へ、さらには暴力的な人間を生み出さないための親のあり方を問うペアレンティング(親のあり方)問題へと、活動は広がるばかりである。「CAPは、すべての事件を防止できる万能薬ではないけれど、未然に防げるという可能性は大きい。子どもが体を動かすには2つの条件があって、一つは本能的に身の危険を感じて反射神経で動ける場合であり、もう一つはいろんな情報やスキルを持っていることで動ける場合。つまり、選択肢が広ければ広いほど自由になれるし、情報とスキルがあればあるほど判断力がつくわけです」

「〜できるんだ」というメッセージが、子どもにとっていかに重要なことなのか。
「暴力は感情の発散であり、自分より力のない側に向かっていく。子どもが自分の力をつけることは、力の落差を減らすことになり、被害者も減らしていく」と田上さんの言葉は力強い。
 今、CAPがなぜこれほど子どもにも大人にも支持され、急速に広まりつつあるのか。権利をわかりやすく伝え、また暴力は権利の侵害であり、その権利を誰かが奪おうとした時はできることがあるというエンパワメントの理論、つまり、これまで私たちの多くが教わってこなかった『人はみな、さまざまな力を持っている』という自分を肯定する心のあり方に、気づかされるからではないだろうか。

NPO法人「CAPセンター・JAPAN」
西宮市門戸荘17-34スマイルヴィラ105  Tel/0798-57-4121
http://www.rock.sannet.ne.jp/cap-j/

NPO法人「女性と子どものエンパワメント関西」
宝塚市中野町4-11  Tel/0797-71-0810
http://www.osk.3web.ne.jp/ ̄videodoc


前のページへ


(C) ニューメディア人権機構 info@jinken.ne.jp