

| ◆シリーズ第2回「こころ豊かな老い」 |
| 長く人生を生きてきた人には、積み重ねてきた豊かな知識や経験があります。若者には真似のできない、その「持ち味」を何に生かしますか?社会貢献もよし、新しい恋もよし。こころ豊かな老いを見つけるシリーズです。
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兵庫県の中央を南北に走るJR播但線、そのちょうど真ん中あたりに位置する南但馬。ほとんどが農家の人口約7400人の朝来郡朝来町で、
ちょっとした味噌ブームが起きている。元気なおばあちゃんグループが作る減塩無添加の『黒大豆入りみそ』が、香ばしくておいしいと注目を集めているのだ。
この不況下、「おばあちゃんの会社やのに、忙しすぎて目が回りそうですわ」とキャリアウーマン顔負けの働きっぷりをみせる「有限会社
朝来農産物加工所」代表取締役の椿野まさ子さん(83歳)。平均年齢73歳の8人の社員をかかえて、味噌作りはもちろん、電話の応対から、伝票整理、自転車での銀行回りと、てんてこ舞いの毎日だ。現在、
味噌の生産量は年間50トン。仕込んでから1年2カ月は熟成期間が必要という長期作業だけに、それを上回る注文には、「嬉しいやら、辛いやらの悲鳴をあげている」というのが現状のようである。
蒸した米を広げてコウジ菌をふり、室に入れる作業の一方で、煮あがった豆を釜から桶に移し、つぶしていく作業が続く加工所内は、
蒸気に加え、高齢スタッフのスピーディーな動きで熱気ムンムン。もう一方では、 空いた釜が手際よく片付けられていく。どれもかなりの力と長年のコツ、そして、根気が必要な仕事ばかりだ。一番若いスタッフで52歳。後継者の一人だろうが、仕事ぶりは年齢に関係なく、実に軽やか。作業時間は午前8時から午後3時までだが、その後は、みんな各家庭の農作業が待っているというハードスケジュールである。「仕事に追われ忙しいけど、ここへ来ると楽しいことばかり。お昼の休憩時間はグチを聞いてもらったり、叱ってもらったり。みんな好きなことをしゃべってますよ。80歳になっても、
来てほしいと言うてくれる所が他にありますか」と、にこやかに語るスタッフたち。
椿野さんたちは本格的に商品化に取り組もうと、蒸し器やミキサーの機械購入を計画。ところが銀行や農協には、年齢的に融資できないと断られてしまった。でも、グループの味噌作りへの意気込みを買ってくれる人もちゃんといた。
「当時の町長さんが町の施設で使う機械やからと、個人で保証人になってくれはって、150万円借りれましたんや。 当初は年間の生産量も5トン。こんなに大きくなるとは思ってもいませんでした。赤字が出てまわりに迷惑がかからないように、がむしゃらにやってきただけです」と、今もエネルギッシュな椿野さんだ。
コクのある手作りの味は年々評判になり、ファンも着実に増加。'93年には兵庫県農業賞を受賞。'95年には町からの出資もあって、有限会社設立にまで成長した。グループの育ての親・椿野さんの視野の広さと、スタッフを引っ張っていく肝っ玉気質に加え、椿野さんを信じ、やるからには一緒に頑張ろうというスタッフの前向きな姿勢が、見事なバランスをとって、思いもかけない村おこしにつながっていったわけだ。
「農村じゃあ、年齢に関係なく働きもんばかりです」 2棟の熟成庫には、来年に向けて40キロ入りの桶がぎっしり詰まっている。おばあちゃんたちの『頑張ってきた歴史』の結晶である。
《黒大豆入りみそ》
◆問い合わせ先 有限会社 朝来農産物加工所 tel:0796・77・1421
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