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2003/07/25
「生きてるだけで意味があるんだよ」と、子どもたちに伝えたい


子どもに期待する自分を振り返ってみる

だからこそ、親自身が「なぜ、子どもにこんなにも期待したくなるのか」ということを一度じっくり考えてみてほしいのです。私がボランティアをしている骨髄バンクで知り合った親御さんたちがこうおっしゃったことがあります。「今までは“いい学校に行ってほしい”“いい子でいてほしい”と思っていたけれど、今は“どんな人生を歩んでもいいから生きていて欲しい”という思いだけです」って。そんな気持ちがベースにあって、子どもにちゃんと伝わっていれば、子どもは勇気100倍なんですけどね。「わたし、生きてるだけでいいんだ。それだけで意味があるんだ」と思えれば、キレたり人を傷つけたりもできないはずなんです。

おとなになることに夢や希望を感じるためには

それから、親ってよく「人の気持ちがわかる、人に迷惑をかけない子になってほしい」と言いますよね。私もずっとそう言われてきました。そしてその意味をとても誤解していましたね。自分の気持ちを抑えるだとか、自分より周囲を優先することだと受け止めて、「いい人」を演じているうちにとてもしんどくなってしまったんです。
「自分を大切に生きてほしい」と親が子どもに言えるようになればいいですよね。口に出して言わなくても、親が自分を大切にしながら生きていれば子どもにも伝わります。親が子どもに期待を託すというのは、自分を生き切れていないという表れ。自分を犠牲にすることが愛だというのは大間違いです。親がイキイキと生きていなければ、子どもはおとなになることが素晴らしいことなんだとは思えませんよね。愚痴やお説教ばかりでちっとも楽しそうじゃない親の姿を見て、「あなたのためよ」と望んでもいないことを押しつけられて、おとなや親になることが楽しみに感じられるはずがないですよね。

さまざまな立場のおとなが発言する大切さ

こんなふうに親子関係や教育について発言すると、子どものいる人に「子どもがいないあなたに、親の気持ちはわからない」なんて言われてしまうんですよね。「じゃあ、そんなふうに言われる私の気持ちがあなたにはわかりますか?」と聞き返したい思いにかられたことが何度もあります。確かに親の気持ちはわからないかもしれない。だけど、わかろうと努力したり寄り添う気持ちをもつことはできる。その姿勢が大切なんだと思うんです。
逆に、たとえ親子でも本当の気持ちなんてわからない。親になったからといって、すべての親の気持ちがわかるかというと決してそうではありませんよね。誰も他人の気持ちなんて、わからないんです。
親になった人も、親にならなかった人・なれなかった人も、いろいろ考えて発言する。子どもを取り巻くさまざまな問題について議論する時には、このバランスが大切なんだと思います。

「子どもの気持ちが分からない」と悩む前に

「子どもの気持ちがわからない」と悩む親御さん、多いですよね。私は甥や姪に対してやってるんですけど、まずは子どもの気持ちをとことん聞いていくことから始めてみてはどうでしょう。自分の気持ちを言葉にして相手に伝えるという表現力がまだ身についていない子どもにとって、泣いたり暴れたりすることが表現なのです。だから泣いていたら、「男の子なんだから泣いちゃダメ!」とか「泣いてちゃわからないでしょう」って言うんじゃなくて、「泣きたいんだ」「泣いていいよ」「どうして泣きたいんだろう……」って、ずうっとゆっくり聞いていく。とっても時間はかかりますよ。イライラしてきて、「さっさと言ってよ!」と思う時もある(笑)。それに、子どもが言いたいことが先にわかってしまうこともあります。そうすると「こういうことなんでしょ」って教えたくなっちゃう。だけどそこは我慢して、子ども自身から引き出さないとダメなんですよね。ずっと待つんです。
実はこれ、子どもが一番上手なんです。子どもは日々、「なんで?」「どうして?」って言いますよね? あれを大人がやってみるんです。私が甥や姪に「なんで? 教えてよ」「どうして?」って聞いていくと、向こうもだんだん面倒くさくなるみたいだけど(笑)、「うーん」と一生懸命考えながら伝えようとします。こうやって、相手の気持ちをゆっくり聞いて、自分の気持ちも丁寧に伝えるということを日々やっていくことで、自分を大切にしながら相手を尊重できる人間関係が築けていけるんじゃないかなと思います。

東ちづる(あずまちづる)

広島県生まれ。会社員生活を経て芸能界へ。テレビドラマやラジオの出演の他、司会、講演、エッセイや絵本の執筆、着物デザインなど幅広い分野で活躍している。プライベートでは、骨髄バンクやあしなが育英会、ドイツ平和村などのボランティア活動を続ける。
主な著書に、「私たちを忘れないで-ドイツ平和村より」(ブックマン社)、絵本「マリアンナとパルージャ」(主婦と生活社)、「ビビってたまるか」(双葉社)などがある。

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