だからこそ、親自身が「なぜ、子どもにこんなにも期待したくなるのか」ということを一度じっくり考えてみてほしいのです。私がボランティアをしている骨髄バンクで知り合った親御さんたちがこうおっしゃったことがあります。「今までは“いい学校に行ってほしい”“いい子でいてほしい”と思っていたけれど、今は“どんな人生を歩んでもいいから生きていて欲しい”という思いだけです」って。そんな気持ちがベースにあって、子どもにちゃんと伝わっていれば、子どもは勇気100倍なんですけどね。「わたし、生きてるだけでいいんだ。それだけで意味があるんだ」と思えれば、キレたり人を傷つけたりもできないはずなんです。 それから、親ってよく「人の気持ちがわかる、人に迷惑をかけない子になってほしい」と言いますよね。私もずっとそう言われてきました。そしてその意味をとても誤解していましたね。自分の気持ちを抑えるだとか、自分より周囲を優先することだと受け止めて、「いい人」を演じているうちにとてもしんどくなってしまったんです。 こんなふうに親子関係や教育について発言すると、子どものいる人に「子どもがいないあなたに、親の気持ちはわからない」なんて言われてしまうんですよね。「じゃあ、そんなふうに言われる私の気持ちがあなたにはわかりますか?」と聞き返したい思いにかられたことが何度もあります。確かに親の気持ちはわからないかもしれない。だけど、わかろうと努力したり寄り添う気持ちをもつことはできる。その姿勢が大切なんだと思うんです。 「子どもの気持ちがわからない」と悩む親御さん、多いですよね。私は甥や姪に対してやってるんですけど、まずは子どもの気持ちをとことん聞いていくことから始めてみてはどうでしょう。自分の気持ちを言葉にして相手に伝えるという表現力がまだ身についていない子どもにとって、泣いたり暴れたりすることが表現なのです。だから泣いていたら、「男の子なんだから泣いちゃダメ!」とか「泣いてちゃわからないでしょう」って言うんじゃなくて、「泣きたいんだ」「泣いていいよ」「どうして泣きたいんだろう……」って、ずうっとゆっくり聞いていく。とっても時間はかかりますよ。イライラしてきて、「さっさと言ってよ!」と思う時もある(笑)。それに、子どもが言いたいことが先にわかってしまうこともあります。そうすると「こういうことなんでしょ」って教えたくなっちゃう。だけどそこは我慢して、子ども自身から引き出さないとダメなんですよね。ずっと待つんです。
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