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「愛情」を強制する社会

 たった3人のケースをみただけでも問題が浮かび上がってくる。まず、障害をもつ人の雇用が、家族(妻)の事実上の無料奉仕のうえで成り立っていること。つまり、障害をもつ人の就職状況が厳しいところに、「妻は夫をサポートするのが当たり前」とする社会的規範がかぶさってくるのだ。「従業員が働きやすい環境を整える」という、本来企業が果たすべき責任を妻が無料奉仕で担っている。「健常者」からすればひどい話のように思えるかもしれない。しかし障害の有無にかかわらず、たとえば育児の負担が妻に偏っている現状を見れば、日本社会の底流にある男女差別の構造と無関係ではない。

 次に、「障害のある男性」と結婚した女性に向けられる強いプレッシャーである。「障害があることをわかったうえで結婚するのだから、よほどの覚悟や愛情があってのことだろう」「だから、弱音や愚痴など言うわけがない(言ってはいけない)」という思い込みや決めつけが、妻を追い詰める。山咲さんは「(大変なのは)わかったうえで結婚したんでしょう。今さらしんどいと言うなんて」と言われたことがある。「それを言われると、とてもつらいです。赤の他人が一緒に住むんだから、どんな夫婦にもいろいろな問題は起きてくるはず。それなのに“障害”というところばかりに注目されてしまう」と話す。光成さんも同じような経験をしてきた。「近所の井戸端会議には参加しにくい。他の奥さんと同じように“うちの夫なんかね〜”と愚痴を言いかけると、戸惑ったりサッとひいたりされるから……」。日常の何気ない愚痴や世間話もしにくく、ストレスをこまめに発散することができない。

 さらに、夫を支えたり尽くしたりすることを求めるのは、当の夫ではなく、周囲であるという事実も見逃せない。高橋さん、光成さん、山咲さんの夫はそれぞれ介助が必要だけれども、妻だけに強制や依存はしていない。妻たちは夫とのやりとりよりも、周囲の目に疲れている。

鉢植えの写真

愚痴も弱音も言いたい

「やらなくてはいけないことは、やる。だけど少しぐらい愚痴を言ってもいいじゃない」。ある時から光成さんはそう考えるようになった。「この人を支えたい」と使命感に燃えて結婚したのではなく、他の人たちと同じように一緒にいて楽しくて安らげるから結婚したのだ。たまたまその人に障害があるからといって、どうして愚痴も弱音も吐かず、ひたすら相手に尽くすことを求められるのだ。それも当の夫ではなく、周囲の人たちに。

「同じ思いをしている人たちと話したい」と考えた光成さんの思いを、知人の新聞記者が記事にしてくれた。「障害者の妻って何だろう」と題された記事に、3人の女性から共感の声が寄せられた。山咲さんもその一人である。「わらにもすがる思いで新聞社に問い合わせました。初めて4人で集まった時には涙が止まらなかった。同じような立場の人と巡り合えるとは思っていなかったから。何年も積もり積もったものを吐き出しました」。ほかの3人の気持ちも同じだった。

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