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わからないことは聞いたらいい

 私も今でこそ、脳こうそくで言葉と足が不自由になった前田さん(前田勝弘さん/映画プロデューサー)の車椅子押したりしてるけど、若い頃は正直言って「あんまりかかわりたくないわあ」なんて思ってたんよ。
 ところが国際障害者年だった1980年、知り合いに「カンコちゃん、一緒に何かやれへんか」って声かけられてん。でもその時、私は「障害のある人と友達になったら、一生つきあうことになるかもしれへん。そんな自信ないわあ」と、ものすごく大げさに考えてしまった。だから「私には無理やわ」と言うたのね。

松井さん そしたら彼は笑って、「カンコちゃん、何言うてんねん。あんたが喫茶店や映画に行きたい時、一緒に行けへんかって誘ってくれたらええねんや」って言うねん。それ言われた時、たったそれだけのことやねんんけど、「あ、そうか」とすごく気が楽になった。「あとは慣れることやな」と思ったの。それからやね。障害のある人とご飯食べたり、どこかへ行くことになると、まず「どないしたらいい?」って聞くようになった。そしたら相手も「こうして欲しいねん」って言うてくれる。そう言い合える関係がつくれたら、大変なことなんかないんよね。

 失敗もいろいろあるよ。前田さんの車椅子押してたら、彼が「寒い、寒い」て言うねん。私は車椅子押してるから汗かいてるんやけど、じっと座ってる前田さんは寒いねんな。前から風が吹いてきたらまともに受けるわけやし。それで「前田さんは私より一枚多く着ないとあかんなあ」って言うてね。
 車椅子を押すのも、最初は怖かった。だからぎこちなかったんやろうね。前田さんも「怖い」って言うねん(笑)。私は「乗ってるだけやから楽やんか。押す方は車やら段差やらに気をつけなあかんし、大変や」と思ってた。せやけど乗ってる人にすれば、車椅子を押す人に自分の身を託すしかない。信頼関係がないと怖くて任されへんわなあ。そんなことも、言われて初めて気がついたんよ。

ちょっとした想像力で見えてくるもの

 今、私たちが問われているのは、相手に対するちょっとした想像力やと思う。障害のあるなしだけじゃなくて、育った環境も癖も違えば、考え方だって人それぞれ違う。最初はわかれへんのが当たり前やけど、ちょっと相手の立場になってみたら見えてくるものってたくさんあると思うねん。
 この映画、そういうとこもちゃんと描いてると思う。ちっちゃくて度のきつい眼鏡をかけたサイモンと、すらっとして男前のジョーが対等につきあってる。けんかしても、相手の価値観や立場を理解し、認め合ってるのね。

松井さん「こういう身体に生まれてきたのは、神様から大事な使命を与えられているからだ。いつか自分は英雄になるんだ」と思うことが、サイモンにとっては生きる拠りどころやった。そして願い通り、たくさんの子どもたちを助けて自分は死んでしまう。でも彼を無垢な天使のようには描いていないの。クラスメートの女の子のおっぱいにクラクラしたり、どの子がかわいいかを品定めするような、ごく普通の思春期の男の子やねん。

 そう、どんな「障害」があっても、心は年相応に成長してる。そこをちゃんと押さえてあるのもよかった。「ワハハ」と笑いながら観てるうちに、サイモンが96センチしかないことを忘れてたもん。私たちも障害のある人やらお年寄りやら、いろんな人と当たり前のようにつき合ううちに、その人の年齢や障害にとらわれることもなくなると思うよ。いろんな人とつき合うほど、自分という人間の幅も広がる。「ひとつレパートリーが増えたな」というぐらいに思っといたらええねん。

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松井寛子さん
’51年生まれ。第七芸術劇場、シネ・ヌーヴォ の支配人を経て、現在はフリーで映画の宣伝を 行っている。一方、「やさしい日本人」「サード」などを手がけた旧知の映画プロデューサー前田勝弘さ んが脳こうそくで倒れたのをきっかけに、’97 年から喫茶店兼居酒屋「風まかせ人まかせ」を友人と共同経営。店の2階に住む前田さんのリ ハビリを友人たちと共に支えている。現在はブータンで初めての映画『ザ・カップ ─夢のアンテナ』 (梅田ガーデンシネマにて3月17日(土)より公開)、『鈴木清順三部作』(シネ・ノーブル梅田にてゴールデンウィーク公開)等の宣伝を担当している。 

『風まかせ人まかせ』 tel/fax:06ー6768ー1340  



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