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「基本編」


Q15.身元調査は、なぜいけないのですか?

差別、排除を目的とした身元調査は、あきらかな人権侵害です。

ここでいう身元調査とは、部落出身者など、とくにその人の【出自】を調べることを指します。そもそも身元調査そのものが、「異分子の排除」という差別を目的としている点で、問題なのです。

身元調査によって就職や結婚をはばまれた数多くの人びとがおり、なかには自殺にいたる例もあります。部落出身者だけでなく、外国籍・婚外子・ひとり親家庭・障害者、そしてその家族たちなども、身元調査のために本人の能力や人格とかかわりなく排除されるという被害にあっています。このため条例を定めて身元調査を規制している自治体もあります。

1975年に発覚した「部落地名総鑑」

戸籍には、本籍地や出生地、家族の氏名などが記載されています。さらに以前の本籍地や住所、祖先の氏名や本籍地をたどることもできます。明治時代に作られた戸籍には、部落だとわかる記載がされているものもありました。

1976(昭和51)年には戸籍の閲覧が制限されましたが、その前年である1975年、全国の部落をリスト化した「部落地名総鑑」と呼ばれる調査資料が、ひそかに高額で売買されていたことが発覚しています。それを参照することで部落出身者だとつきとめることができてしまいます。2005(平成17)年以降も「部落地名総鑑」は回収されています。とりわけ近年のインターネットの発展のなかで、その内容が拡散するという不安が現実化しつつあります。

行政機関は膨大な個人情報を収集管理しています。一元化を指向する巨大システムが構築されつつあるなか、その情報の流出や漏洩(ろうえい)、あるいは職員の不正閲覧の影響はかつてとは比べものにならない大きさになっています。弁護士など有資格者による戸籍情報の不正取得事件も起きています。

こうした行為が問題だという感覚は、身元調査を許さない取り組みを通じて共有されてきました。わたしたちの個人情報が簡単にのぞき見されてしまう社会にしないためにも、その実行をくいとめる法令やシステムの整備が求められています。

【出自】
どういう家柄なのか、どのような血筋か、どんな地域で生まれ育ったか、ということを意味する語。「家柄」とは、「家」を単位としてなされる、伝統的な価値観にもとづいた社会的評価のことです。「血筋」は、本来は生物学的な事実をさすものですが、出自の判断基準として用いられる際には、その枠をこえて社会的な観念としてとらえられています。