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高齢者

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2010/06/22
病気を治すことだけを考えるより、幸せに死を迎えさせられる医者がいてもいい

心の底にある素朴な質問ができる病院があったら、どんなにいいだろう。

まず、ホスピス外来で痛感したのは、患者さんの約半数が、それまでの病院で充分やっていけるはずなのに、病院側の説明不足のために上手くいかないケースが多いことでした。「もし手術や延命治療を受けなかったらどうなるのか」、「この検査や治療は本当に必要なのか」など、不安をいっぱい抱える患者側は、医者に聞きたいことが山ほどあるのに、実際には気後れして充分に聞けない。そのため理想の治療を求めて、ホスピスに自分から移ってしまうケースです。そんな頃から、今の時代には医者と患者や家族の間に立って仲介をする「橋渡し役」の医師が必要じゃないかと思うようになりました。

 

その後、病院嫌いだった母がガンにかかり、入院も手術も断固として拒否したことで、私もその時しか最愛の母に尽くせないと、軌道に乗りかけた仕事を思い切ってやめてしまいましてね。2年ほど在宅看護に打ち込んだのですが、その母を看取った後に、その思いはさらに強くなりました。「自分たちの理想の看護をしたいのだが、なるべくリスクを少なくするにはどうしたらいいか」「告知ってしなきゃいけないのか」など、自分が医者でありながら、相談にのってくれるお医者さんがいたらどんなにいいかなと。

それで、医者というのは自分の意見を押しつけがちだから、まず患者側の話を聞いたうえで、患者や家族の素朴な疑問に答えられる「駆け込み寺」のような病院を自分でやろうと決心。97年に「ひまわりクリニック」のオープンとなりました。

電話相談もしていますが、病気以外の相談も多いんです。看病が嫌になって投げ出したいという人もあれば、中には殺したいほど腹が立つという人もある。私は、そんな気持ちは自然に涌くもので、誰もが思うことだから、取り敢えず看病を放り出しなさいって言うんです。そんな人に限って放り出せないし、何日か休めばスッキリできる。否定するともっと苦しくなるから肯定してあげるんです。殺したいとまで言う人には、冗談まじりにどんな方法で殺したいのと聞いてみる。でも、「なんだみんなが考えることなんだ。これは人間なら自然に涌いてくることなんだ」と思えることで気も楽になれて、立ち直られる場合が多い。大抵の相談は、だいたい1回で終わりますね。

医者選びの相談もかなりあります。とにかくこの医者とは合わないと思ったら、なるべく早い段階で病院を変わること。自分の命は1つしかないんですから、納得できない人に預けるのは問題があります。普通の人間関係だって、たまたま出会った人と仲良くできる確率は低いわけで、医者にしても同じですよね。それまでの検査のデータは、あらかじめ移る病院を決めておき、そこの医者からデータが欲しいと一筆書いてもらえればスムーズにいきます。病気以外でも、大切な人を亡くした方からの相談、「自信がもてない」「生きているのが辛い」「拒食や過食で悩んでいる」など、心と体の健康相談も多いです。

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