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今後の部落解放同盟に期待します!  永六輔さん3

2001/02/02


月並みな話ですが、いじめた側は自分の言ったことを忘れても、いじめられた側は何年経っても絶対に忘れません。僕は子どもの頃、「永」という一文字の名字でどれだけいじめられたか。僕をいじめた奴は、僕をいじめたことをすっかり忘れてしまっていて、大人になってから、「いやあご活躍で」などとニコニコと近づいてくる。僕は忘れていないから、「この野郎」と思うけど、ついうっかり笑顔を返してしまう――なんてこともあります。
「部落ってなあに?」という、差別のことを知らない人たちに、「知らないことが悪い」と怒るんじゃなく、「じゃあ、一緒に考えましょうよ」と。あるいは在日の問題だったら、「本名を使わなければならない」じゃなくて、本名を名乗っている人もいれば、日本名を使っている人もいるというのが現実だってことを大切にする。最近の解放同盟の懐の大きさは、そういった姿勢からも伺えますよね。

海外の差別問題への関心から、部落問題につなげていくのもいいと思うんです。
今、あちこちで戦争が起きていたり、難民キャンプに収容されている人もいますよね。賑やかなお祭りとして報道されるリオのカーニバルには、年に1回だけ征服者の衣装をつけて下層階級の人たちが踊ることが許されるという、日本でいう被差別部落の人たちのお祭りという側面もある。あるいは、南アフリカ共和国ではアパルトヘイトが制度としてなくなったといってもまだ黒人差別は続いているし、インドにはカースト制度も、宗教だからと手がつけられない形で残っている。ユダヤの問題もある。そういった海外の問題に目を向け、活動している人たちに、
「日本にも、部落問題があるんですよ」
と声をかけつつあります。世界中にいろいろな形で存在する差別問題について、解放同盟はいろいろな角度で解説し、発言していってほしい。今後の展開が楽しみです。

永六輔(えいろくすけ)
随筆家、作詞家、放送タレント。
1933年、東京・浅草生まれ。学生時代にラジオ番組やテレビ番組の構成に関わって以来多方面に活躍。「上を向いて歩こう」「こんにちは赤ちゃん」などの作詞を手掛ける一方で、各地の芸能を訪ね、尺貫法など日本の文化を守る運動も行い、今も1年のうち300日以上は旅暮らしが続いている。『大往生』『芸人』『職人』『商人』(以上、岩波書店)など著書多数。