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2013/10/11
再び社会とつながるために~「生活保護脱却」から「社会的自立」へ~ おしごと興業合同会社「とらんぽりん」


あきらめていたことをひとつずつクリアしていく

おしごと興業の作業風景

 今、イワサキさんは年金生活を送りながら、たびたび「とらんぽりん」の現場に顔を出し、軽口を言いながらひとときを過ごす。一方で仕事探しも続けている。「人間、動いてるほうがええで。家でも一人やから話し相手もおれへん。体を動かすことと人と話すことが大事やねん。溶接の仕事があったらええけど、何でもするで」と話す。

 タムラさんは「おしごと興業合同会社」の斡旋で就職、地下鉄の駅の清掃をしている。勤務時間は夜7時から深夜3時まで。ゴミを回収し、トイレを掃除し、ホームや階段に水を流して洗う。昼夜逆転で、休みは週1日しかない。きつい仕事だが「自分で稼いだお金でやっていけるのはいいですね。いずれは元々希望していた運転手の仕事に就きたいと思ってます」と話してくれた。表情は明るく、時々イワサキさんと顔を見合わせては笑い合っていた。

 あらためて問いたい。どういう状態を自立というのだろうか。南田さんはこう答えてくれた。

「どうしようもない事情があって生活保護を受けるようになり、落ち込んだり自信をなくしたりしていも、みんな何とかしたいと思っています。その気持ちがあるうちは、きっかけさえあれば元気を取り戻してまた社会につながっていけます。きっかけは、友だちができたとか、月に1回飲み会があるとか、そんなことでいいんです。就職とか生活保護からの脱却とか言われたらすごい距離があるけど、友だちつくるとか、3食ちゃんと食べるとか、今まであきらめきっていたことをひとつひとつクリアしていくことならできる。イワサキさんたちの姿を見ていると、そのこと自体が立派な自立なんだと強く思います」

 イワサキさんやタムラさんの存在が、次の「とらんぽりん」のメンバーを励まし、支えている。南田さんを始め、スタッフに人が尊厳を取り戻していく姿を伝えている。支援する/されるという一方通行の関係ではない。自立もまた、自立している人/していない人という分け方はできないのではないだろうか。自立している(と思っている)人も、どこかで誰かに支えられている。その視点に立って、生活保護を必要としている人が「社会的自立」に向かえる環境を整えることが必要なのではないだろうか。

(2013年6月取材/構成・社納葉子)

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