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一つの自殺には、いろんな問題が絡み合ってる

弘中さん 夫のカードで借金を抱えた女性からの相談は複雑だった。
 すでに自己破産していて、暴力を振るう夫には恐くて打ち明けられないと言う。一度会って話し合ったが、夫婦関係まではタッチできず、カウンセラーを紹介した。その後に「いろいろ聞いてもらったけど、もう死にます」という電話。薬を服用していて電話中に言葉が絶えた……。おおよその住所から近くの消防署に依頼し保護してもらったところ、女性は気を失った状態だったが、1週間ほどで退院。自殺は防止できたが、夫婦関係まで修復できていないはずだと弘中さんは語る。
「多重債務は単なる要因のひとつであって、DV、虐待などいろんな問題を含んでいる。特に、家計費不足からの借金の場合は夫にないしょにしている人が多く、安易に『夫と話し合って』と勧めることで夫から暴力を振るわれ、その晩に自殺した例もある。家族の問題点すべてを引っ括めて相談に対応しなければいけないんです」
 切ないのは電話の向こうで子どものすごい泣き声が聞こえる時。支払で追いつめられると普通の精神状態ではいられず、弱い者にあたって手が出たり、暴言を吐いたりしたりがちだ。子どもにアザがないかなど、苦しんでいる人のサインを見逃さないようアンテナを張りめぐらせた社会になってほしいと語る。
 以前、多重債務の行政の相談窓口で、「お宅、もう破産しかないね」と相談員に言われ、その日の夜に自殺した例もあった。「たとえば破産しかないにしても、正直、それからの人生で困ることは少ない。よく保険証を取り上げられるんじゃないか、戸籍や住民票に書かれる、孫子の代まで祟られるといわれる。ブラックリストが存在すると思ってらっしゃる方もある。そうじゃないことまで説明してあげなきゃいけないんです」。

 遺族からの電話相談も多い。
 今もパニック障害に苦しむ女性の弟は、上司の保証人になっての保証債務を苦に自殺した。上司は夜逃げをしてしまい、厳しい取り立てに弟は他から借りて返済していたのだ。それを知った女性は、姉とともに役立ててほしいと数百万円を用意。しかし、それでは足らず、借金はその後も膨れ上がっていった。結果、弟は浴室で自殺してしまったのだ。女性は、なぜ最初にすべて清算しておかなかったのかと自分を責めることに。さらに、弟が住んでいた賃貸マンションの不動産会社からは、自殺を理由に多額のリフォーム代を請求されたのだ。弘中さんは、すぐに弁護士を紹介。弁護士が仲介したことで不動産会社は無法な請求を取り下げ、妥当な金額で解決した。しかし、女性のパニック障害は数年経った今も治らない。弘中さんは言う。「私も、母が勤務先のホテルのゆかたのヒモで首をくくったので、今もヒモを見るとパニック状態になる。だから、仕事先でも私が泊まる部屋には、ゆかたは置かないようにしてもらってます」。自死遺族は何年経っても、トラウマとフラッシュバックに悩まされ苦しんでいるのが現状である。


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